シンギュラリティ大学が
日本に期待していること

――技術開発の遅れにつながっている一番の理由は何でしょうか。

 日本の人たちが急速に取り組む必要性を感じていないことが大きな理由だと思います。日本の人たちはお風呂が大好きですが、今の日本の企業は、まるで「いつまでもお風呂から出られない人」のようなものです。熱いお湯に漬かっているとポカポカ気持ちよくて、ついのんびりしてしまいますよね? しかし、お湯が冷めてくるとだんだん体が冷えて、ある時点で湯船から飛び出すことになる。私からすれば、「いつか冷めると分かっているんだから、もっと早く出なよ!」ということです(笑)。

 日本の大企業には、潤沢な保有資産がありますし、現在も雇用の状況は安定しているため、ぬるま湯から出にくい状況になっているのかもしれません。

 私が尊敬するラグビー日本代表の元ヘッドコーチのエディー・ジョーンズ氏は、考え過ぎるよりアクションを起こすべきだと日本人選手の意識改革を進めました。それには4年かかったそうですが、その効果は、15年のワールドカップイングランド大会の南アフリカ戦で勝利を収めたことで証明されました。今の最先端テクノロジーの急速な変化に対応するには、ビジネスであれ、社会課題の解決であれ、今すぐ意識改革を進めなければいけないと思います。

――今回のジャパンサミットのような試みは、他の国でも始まっているんですか。

パトリック つい先日、デンマークでも大きなサミットがありましたし、オランダ、ニュージーランド、ドイツでも始まっています。私のように、シンギュラリティ大学本部のプログラムに参加した人たちが、テクノロジーの急速な変化や指数関数的な発展に対応する必要があると感じ、自国へシンギュラリティ大学のプログラムを通してその活動を広げようとしています。

――シンギュラリティ大学は日本のどのような部分に注目して、どんな期待を持っているのでしょうか。

パトリック 日本はこれまで世界を変えるほどのテクノロジーを生み出してきましたし、今でも生み出される製品やサービスの水準は高い。64年に東京オリンピックが開催された際にも、日本のテクノロジーが飛躍的に発展し、それを世界に示すことができましたが、今また、20年を目前にそれと同様のチャンスを迎えています。シンギュラリティ大学は、こうした背景からも日本にはまだまだ人材もアイデアも豊富に眠っているんじゃないかと考えているのです。

 シンギュラリティ大学CEOのロブ・ネイルはロボティクスの専門家ですが、日本の文化とテクノロジーの関係から常に大きなインスピレーションを得ていると話しています。特に木や竹のようなローテクの素材と最先端のテクノロジーをうまく組み合わせて、新しい機能を生み出すといったプロセスは世界的に見てもユニークだと評価していました。

 日本の人々が気づかないところで、しかも最先端のテクノロジーを研究する人々が日本で当たり前のことを評価しているのはとても面白いと思います。こうした視点は日本の強みの再発見にもつながるわけで、シンギュラリティ大学のネットワークが日本で広がることは、日本にとっても大きな意味があるはずです。