無期雇用派遣に転換できる
「5年ルール」とは
第一に、最短で4月以降に影響が出る「5年ルール」を詳しく見ていこう。派遣社員が、雇用契約の期間を定めない「無期転換」の申し込みを派遣会社に対して行うことができる条件は、(1)通算期間が5年を超えている(注1)、(2)契約の更新回数が1回以上ある、(3)現時点で同一の使用者との間で契約をしている、といったもの。これは義務ではなくあくまで派遣社員の任意となる。一方、申し込みを受けた派遣会社は拒むことができない。
従来の派遣社員が無期派遣社員になるとりわけ大きなメリットは、休業手当が受け取れることだ。これまで派遣社員は、派遣先企業との契約が終了した後、次の就業先がすぐに決まらない場合は、失職することになっていた。それが無期派遣になると、次の就業先が見つからない期間も、派遣会社から一定の割合で休業手当が発生し、これまで雇用契約が終了する度にリセットされていた社会保険や健康保険、有給休暇などを引き継ぐことができる。
一方で、デメリットもある。社員と同等の扱いになるため、就業する企業、勤務地、労働時間などをこれまでのようには自由に選べず、多少は望まない条件の派遣先で働かざるを得なくなることがある。「派遣社員にとって不利益変更にならないよう、著しく条件が落ちることはない」(前出の派遣会社役員)と言われるものの、不安を感じる人は少なくない。
総合人材会社ランスタッドの研究機関が昨年8月、国内の労働者に対して行ったアンケート調査によると、派遣社員として働く300名の回答者のうち、無期転換を「希望する」が38.7%、「わからない」が39.7%、「希望しない」が21.7%で、「わからない」「希望しない」という回答が全体の6割に上った。これは現状に鑑み、有期の派遣社員という働き方をあえて選んでいたり、正社員になるまでのつなぎと考えていたりする人が多いと思われる。派遣社員の「迷い」が伝わってくる調査結果だ。
(注1)通算期間のカウントは、2013年4月1日以降に開始した有期労働契約が対象で、派遣社員の場合は同一の派遣会社で1年以上働き、働いていない期間が6ヵ月以内であれば、働いてない期間の前の部分も通算にカウントされる。4月1日を超える契約が無期転換の対象なので4月1日付で派遣社員が一斉に無期転換になるわけではなく、派遣社員によりそれぞれの契約期間が異なるため、いつから権利行使できるかは派遣社員によって異なる。なお、5年間勤め続けることが最低条件ではないため、派遣社員が派遣会社に対し無期転換を申し入れることは可能だが、派遣会社側が無期転換の義務を負うのは5年以降となる。