そうした結果を踏まえた面談の場で、

「どうだったかな、何か気づきは得られたかな?」

 と問いかけるA部長に対して、B君は、

「自分がよく理解できていない点がはっきりしたので、そこをちゃんとカバーしていきたいと思います」

 と言い、それぞれの案件の説明事項について、自分が理解できているかどうかチェックするようになった。その努力によって、B君の説明力は向上していき、徐々に成果を出せるようになった。

 いくら注意してもこちらの言葉が相手の心に染み込まず、仕事のやり方が改善されない部下には手を焼くことが多いはずだが、仕事のデキない部下は自分がきちんとできていないことに気づかないということは覚えておきたい。こちらの言うことをわざと無視しているわけではないのだ。こちらの言うことを「なるほど」と聞きながら、自分はきちんとできていると本気で思っている。

 ゆえに、こちらが強く注意したりすると、向こうはいびられているような気持ちになり、感情的に反発するばかりで、こちらの真意を理解してくれない。だからこそ客観的な証拠をもって自分の状況を自覚できるように導くことが大切なのである。

※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため社名や個人名は全て仮名とし、一部に脚色を施しています。ご了承ください。

(心理学博士、MP人間科学研究所代表 榎本博明)