見積もりの中には、「想定値」で計算される部分もある。例えばタイルの浮きとか、ひび割れなどの下地補修工事が代表例だ。正確なところは足場を掛けて初めてわかることなので、あとで実数精算をすることになる。1000万円の想定値が1500万円になってしまうといった場合もあるため、管理組合は予算にある程度の予備費枠を設ける必要がある。

 しかし、これを悪用して、監理担当者は実際1000万円しかかかっていなくても、1500万円の決済をして、工事会社には見返りとして領収書なしの200~300万円を要求するというケースがあるのだ。

 さらに、監理担当者は工事の完成検査に関して大きな権限を持つため、ここでも不正が起こる。検査合格の決め手は「完璧な仕上がり」ではなく、「検査後の接待」次第といったこともあるのだ。

 ある監理担当者は検査の日、ヘルメットに作業着姿でやってきて、写真を2~3枚撮っただけ。検査に受かるかどうかは、その後の接待にかかっているのだという。ひどい話だが実例だ。10件中全てとは言わないが、今まで工事会社から聞いてきた話では何割かはそのような状態なのだ。中には、現場所長をクラブに誘い、飲み代は全額払わせたうえに、「領収書は自分によこせ」と要求する猛者までいる。

 こんな悪徳監理担当者でも、雇い主であるコンサルタント会社(設計監理会社)は見て見ぬ振りだ。不本意な解雇でもしようものなら、会社自体が二重、三重にリベートを受け取っていることを、施主であるマンション管理組合に暴露されてしまうからだろう。そうなれば元も子もないから何も言えないのだ。

 かくして、実質2億円の大規模修繕工事は3億円となり、何も知らないマンション住民は、積立金を使い果たして高い買い物をさせられる。

 こんな目に遭わないためには、マンション管理組合は、管理会社の手を借りずに、自分たちでよく調べて、リベートを取らない設計コンサルタント会社に設計監理を任せるしか方法はない。

(株式会社シーアイピー代表取締役・一級建築士 須藤桂一)