吉原精工流・9つの「ごめんなさい」
9つの「ごめんなさい」について、吉原精工の考え方を順に理由をご説明していきたいと思います。
「ごめんなさい その1」「ごめんなさい その2」では前加工・後加工はしないこと、加工素材の手配はしないことを宣言しています。
大手企業のお客様などの立場からすれば、通常は「図面を用意したら、ワイヤーカットだけでなく、素材の手配から前加工・後加工も含めて全部引き受けてもらえれば便利」とお考えになるでしょう。しかし、吉原精工では、ワイヤーカット加工のみに特化することで効率性を高めているからこそ、「うまい」「やすい」「はやい」を実現できています。
素材の準備やメッキ、焼入れなど、ワイヤーカット加工の前や後に必要となる工程を引き受けようとすれば、設備や人材の手当てが必要になり、本業であるワイヤーカットの効率性は落ちてしまうでしょう。こうした背景から、吉原精工では「素材の手配や前後の加工もやってほしい」という大手企業から直接お仕事を受けることは避け、1次下請けの会社からワイヤーカット加工のみを受注するようにしています。
本当であれば、何でも出来ますとミエを張りたいのですが現在ではワイヤーカット加工しかできない会社 吉原精工と逆手にとってPRしています。
「ごめんなさい その3」「ごめんなさい その4」では、加工品の集配や集金のためにお客様のところまで伺えないこと、商品や代金のやりとりは宅配便や銀行振込で行わせていただくことを宣言しています。
実は、吉原精工では地元・神奈川県を「営業禁止エリア」としています。というのも、県内の会社との取引では集配を要求されることが多いからです。もちろん、集配や集金なしでもいいと言っていただける会社とは、お付き合いをさせていただいています。
集配や集金には、どうしても人手がかかります。昔は私が県内の取引先企業に集金に出向くことが多く、3000円の小切手を受け取るために午後がまるまるつぶれるといったこともありました。その間にどれだけの仕事ができるかを考えると、とてもこのようなことは続けられません。無駄な動きはコストアップとなりお客様にご迷惑をおかけする事になるからです。
繰り返しご説明しているように、時間あたりの仕事を増やすことは、そのままコストダウンにつながり、お客様に安くサービスを提供することを可能にします。ですから、人手を集配・集金に割くことはできないのです。
「ごめんなさい その5」は、金型業界の仕事をお受けしないことを宣言しています。
実のところ、創業した1980年から90年代半ばまでの吉原精工は、各種電気製品や自動車関係の金型加工が売り上げの約95%を占めており、取引先は約50社程度でした。金型業界の特定企業に依存していたといってもいいと思います。
金型業界からの撤退を考えたのは、理由がありました。
金型の加工というのは、納期が非常に短く厳しいという特徴があります。金曜日に図面を渡され、月曜日までに加工してほしいという注文も少なくありませんでした。通常なら1週間はかかる加工を、週末の2日間でなんとかしてほしいといわれるわけです。
金型加工がこのような厳しいスケジュールになるのは、ものづくりにおいて金型をつくるのが「これさえ完成すれば、あとは量産に入るだけ」という最終段階だからです。発注主がぎりぎりまで設計などに時間をかけることは多く、
「何とかスケジュールどおり製造開始にこぎつけるには、金型づくりを短期間で終えるしかない」というシチュエーションが発生しやすいのです。もちろんこれはあくまで私の考えで、これらに対応して頑張っている金型業界の会社もたくさんあります。
最終的に吉原精工では金型の仕事をお受けしないことに決め、50社ほどあった取引先にそのことを伝えて同業の仲間を紹介しました。吉原精工としては、分野を絞ったことで、新規に顧客開拓を進める必要性に迫られ、同時にそれまで少数の企業に依存していた体質も改めることになりました。
現在では、食品加工機材関連部品、医療用関連部品、半導体関連装置用部品、航空機用部品など、さまざまなジャンルでワイヤーカット加工を手がけ、取引先は約500社まで拡大しています。