「治す」視点からの介入による弊害

 こうした一連の医療重視策が介護現場に与える影響は大きい。「治す」視点からの介入が拡大していくと、「生活を共に」という介護本来のあり方が歪まざるを得ないだろう。身体機能の動作(ADL)から判断する傾向が強くなり、生活の質(QOL)が脇に置き去りにされかねない。

 医療では、障害が生じた臓器への対応は一般性があり共通性が強く、確立された一定の治療法が適用される。個別性は退けられ、日常生活的な感情は排除される。ところが、介護では逆に、個別性や日常性が尊重される。食事の好みにはじまり日々の細かな仕草など1人1人異なる価値観を前提に、ライフスタイルごとの対応が求められる。

「百人一色」でまとめられる医療に対し、介護は「百人百色」として個別性が発揮されねばならない。

 それが顕著に表れるのは認知症のケアだろう。心の落ち着きや安定をまず求められるのが認知症ケアである。日々のゆったりした環境から始まり、周囲の職員の声のかけ方の一つひとつが大切であり、医療の視点ではなかなか目が届かない。

 そして、忘れてならないのは「本人の意思」「本人第一」についての医療と介護の溝であろう。「本人が選ぶ介護サービス」を掲げて制度化した介護保険法と「治す」技術者として権威を持つ医療が「連携」するには、道遠しと言わざるを得ない。ただ現実は、診療報酬と介護報酬が同時改定される6年に一度のダブル改定と言われてきたが、どうやら「介護への医療の浸透」となりつつある。

(福祉ジャーナリスト 浅川澄一)