なぜ、「暗黙知」は
「仮説検証」より強いのか?
データ分析も同じです。
データを溜めてから分析して仮説を立てるプロセスではスピードが遅すぎます。
理屈がはっきりしていなくても、これまでの経験(手持ちのデータ)から判断する知恵のことを「暗黙知」と言いますが、まず暗黙知で判断して動きます。
その行動を追いかけるようにさらにデータを溜め、結果を検証して、そこから次のPDCAサイクルにつなげていけばいい。
暗黙知は仮説検証より強い。
仮説検証と暗黙知の違いは、「演繹法」と「帰納法」の違いと言ってもいい。
演繹法は、まず理論で結果を導き出して、あとから事実で理屈の正しさを証明する考え方です。
一方、帰納法は、まず事実を並べて共通する法則性を見つけ、あとはなぜそうなるのかという理屈づけをします。
仮説検証は演繹法ですが、理屈にこだわるあまり、事実を都合のいいように解釈してしまいがちになる。
つまり思い込みが発生しやすい。
それに対して、帰納法は暗黙知で、まず事実ありき。
先入観なく素直にデータを見られるから、正しい答えを導けます。
これも仮説検証より暗黙知がすぐれている点です。
データ分析は、いまあるデータでとにかく始めてみることが正しい。
これまで何もデータを取っていなかった会社でも、決算のために経理が売上や粗利益などの基幹データを持っています。
まずはそのデータを並べて、何か読み取れないか考えてください。
「売上が急に増えた月が2回あったけど、その月はいつもと違うことをしたのか?」 「1店舗あたりの粗利益額が、半年前から減り始めている。半年前に人事を変えたせいだろうか?」
こうしてデータと事実を突き合わせて法則性を導き、そこから検証のプロセスに入ります。
このほうが仮説検証よりずっと早くて正確です。
ぜひ、第1回連載にある、【あなたの会社の危険度ワースト「15の死角」】をチェックしながら、『数字は人格』をカラダ中の細胞に植えつけていただけたらと思います。