ブロックチェーンを使った仮想通貨は、それぞれに様々な特徴を持つ。今回のNEMでは、ビットコインにはないモザイク(タグ付け)機能を使い、資金の流れを追うことができた。しかし、跡は追えても、回収できないのだ。ウォレットまで確認できているが、本人確認をしていないため、ウォレットの所有者が誰かは特定できない。閉鎖・回収をしようにも、ブロックチェーンは書き換えができないため不可能というわけだ。

 1月31日からは盗難に遭ったNEMの移動が行われ、当初の9ウォレットから10以上に資金の分散がされている。さらには個人のウォレットだけではなく、米国の取引所にまで送金された。取引所は取引の数が格段に多く、追跡や規制が難しくなっていく。こうした動きも追うことはできても、「見るだけ」だ。本稿執筆中にも、チェコなど海外の取引所を始め世界中に拡散しているようだ。海外の取引所では、中には少額であれば本人確認せずに支払うところもあるという。

金融では利用者保護が最も大切

 机上では分かりにくいが、金融で大切なのは、民間金融機関の現場であり、そこでの「利用者(消費者)保護」である。参加者をプロとアマチュアとに分けた場合、そのアマチュアに当たる利用者を保護することだ。

 ブロックチェーン技術に基づく仮想通貨の取引では、「保護」の視点が弱い。金融商品には金融商品取引法があり、利用者の保護がなされている。セキュリティ強化の観点から考えても、細かく分散化させていくほど、保護は難しくなっていく。

 誤解している向きもあるが、現在、金融機関や決済インフラのシステムは「集中化」の方向にある。ブロックチェーンについては、日本証券取引所グループの東京証券取引所のシステムも、全銀協が運営している振込を行う全銀システムも、現時点では本体でブロックチェーン技術を使うことはないと聞いている。仮想通貨の研究を進めているメガバンクにしても、今回のコインチェック事件で、ブロックチェーン技術は本体で使うことはないとコメントを出している。本体からはあえて切り離して、別会社で検討と実証実験をしているのだ。

 ブロックチェーン技術をベースとしたビットコインでは、マイニングされ送金が実行されるまでに10分以上の時間がかる(中国でマイニングが禁止さる方向で、さらに時間も掛かるようになるだろう)。一方、たとえば全銀システムでは、ほぼ即時に他行の口座に入金される。誤解もあるようだが、世界最高峰の性能なのである。しかも、コストも、1件6.5円が標準であり、そこから使用量によってさらに安くなっていく、かなり廉価なシステムといえるのではないか。