「在宅重視」が一転

 大半の要介護高齢者がかつては、「在宅」から「病院・施設」に移らざるをえなかったが、「地域包括ケア」が整えられると、病院・施設から在宅に戻ることができる(図3)。

 在宅は病院・施設と違って、制約された「非日常」でなく、自立した生活を送ることができる「日常」である。本人の気持ちが落ち着き、QOL(生活の質)が高まる。しかもかかる費用は安い。

 サ高住に、「診療」と「看護」「介護」3サービスが投入されれば、病院や施設への入院・入所は不要になる(図4)。

 診療は、在宅療養支援診療所からの訪問診療であり、看護は訪問看護ステーションの訪問看護である。そして、介護は、小規模多機能型居宅介護と看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護という介護保険サービスである。さらに、夜でも家族や友人が来てくれ、好物もいつでも食べられる。病院・施設にはない「生活」を得られる。

 第4回目の報告書(2013年度事業、2014年3月発表)になると、第1、2回目で掲げられた「徹底した在宅志向」「脱病院、脱施設」の理想論が大きく後退してしまう。既存の医療・介護事業者に配慮した現実路線に舵を切っていく。

「施設から在宅へ」「在宅重視」というのは介護保険の基本理念だった。ところが施設重視に切り替わっていく。

 特別養護老人ホーム(特養)がそのまま「住まい」になると記される。特養を「内部に蓄積された専門サービスが効果的・効率的に受けられる『住まい』として、これからも機能するよう引き続き期待される」と位置付け、「住宅への転換」案が消えてしまう。

 最重度者の施設、介護療養型医療施設までも「居宅で生活する医療依存度の高い要介護者に対する支援拠点としても期待される」と、こちらも「期待」感が高い。「医療は在宅医療で」と唱えていたはずが様相は一転する。いずれも既存事業者からの反発を買い、筋を通せなかったのだろう。

 そして第4回報告書で新たに持ち込んだのが「地域ケア会議」であり「規範的統合」という概念である。これにより、保険者としての自治体のリーダーシップが強く要請されることになった。

 一方で、消費税のアップが難しくなって財源難問題が浮上し、介護保険制度の持続性を保つには、総費用の抑制論が財務省から強く指摘されてくる。「保険者機能の強化」という言葉で、総費用の抑制に向かわせようという狙いが次第に鮮明になっていく。