そんな部下を見るにつけ、A部長の頭をよぎるのは、かつての部下C君のことだ。

 C君は、B君と違って、ノルマ達成に向けてがむしゃらになって頑張るといった感じではなく、わりといつも淡々としていた。初めのうちはノルマを達成できないこともよくあったが、2~3年経つと急激に力をつけて、頼もしい部下に育ってくれた。今では別の部署で力を発揮している。

「B君とC君で何が違うのか。なぜB君は伸び悩み、C君は伸びていったのか。B君を成長軌道に乗せるには、いったいどうしたらいいのか」

 A部長はB君の育成方法を巡って解決策を見い出せずにいたのである。

「伸びる部下」と「伸びない部下」では
 目標の持ち方が違う

 そこで私は、A部長にC君が伸びていった時の目標の持ち方を振り返りながら、B君の目標の持ち方に着目するようにアドバイスした。

(目標の持ち方の違いによって、「伸びる部下」と「伸び悩む部下」、あるいは「頼もしい部下」と「頼りない部下」を見分けるヒントがあるかもしれない……)

 その後、A部長と会うと、「違いがわかりましたよ」と目を輝かせて私に報告してくれた。それを聞きながら、2人の目標の持ち方をめぐって話し合っていくうちに、B君とC君では、次のような違いがあることがはっきりしてきた。

 B君は、ノルマ達成のために売り上げの数字をとにかく上げることにこだわる。そのため即効性のある攻略法を求めて、日頃熱心に手に取っている資料や本も、上手くいくためのハウツーものばかり。目の前の数字を上げるのに直接役立つテクニックへの関心が強く、その習得に非常に熱心なのだった。

 一方でB君は幅広い知識を増やしたり、深く考えたりするのを怠っているために、知識の幅の狭さや思考の深みのなさを感じさせるのだとわかった。

 また、B君は即効性のあるテクニックばかりを仕込もうとするあまり、知識に汎用性が乏しく、状況がちょっとでも違うと応用が利かない。それが新規案件に対する弱さにつながり、頼りなさを感じさせたりする要因になっていたのだということもわかってきた。

 それに対してC君は、目先の数字を目の色を変えて追いかけるといった感じはまったくなく、「営業について学びたい」「営業力をつけたい」という意欲が非常に強かったのである。

 そしてC君は「営業についてあらゆることを学びたい」と思っているようであり、営業に関する基本的知識や理論について解説した本や資料を熱心に読んだり、様々な具体例を元に営業のポイントを説く本や資料まで幅広く目を通したりしていた。

 A部長は、研修時の様子を振り返ってみても、2人の質問の内容がまさに対照的だったことに気づいた。

 B君は即効性のあるテクニックを求め、ハウツーに関する質問をしていたのに対して、C君は営業に関する理論的な背景についての質問が目立った。両者からわかるのは、学びの深さが違うということだ。