エクソンのシャーマン・グラス副社長(右)と話す武藤潤・東燃常務
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 業界再編の呼び水となるかもしれない。

 米石油最大手のエクソン・モービルが発表した日本事業の大幅縮小とグループ再編で、こんな憶測が強まっている。

 台風の目となりそうなのがエクソン傘下の東燃ゼネラル石油。今回、東燃はエクソンの日本法人の株式99%を約3020億円で取得すると発表し、エクソンの東燃に対する出資比率が現行の50.5%から22%に低下。東燃は、日本での製販事業を一体運営していくこととなり、高い経営の自由度を手に入れることになる。

 これまで東燃は、冷徹に高収益を追求するエクソンの下で徹底した効率化を求められ、新規事業などにも手を出せないがんじがらめの経営環境が続いていただけに、「意思決定、経営判断を国内で完結できる体制にしたいと考えた」と語る東燃の武藤潤常務の口調には悲願達成の喜びがにじむ。

 とはいえ、東燃の視界が良好かというと、そうではない。

 なんといっても買収金額が「高過ぎる」(業界関係者)との声が上がる。じつはエクソンは昨年、コスモ石油とも売却交渉を進めており、「2社間で争わせて価格をつり上げていた」(同)。その結果、東燃は2000億円以上を銀行からの借り入れで調達することになり、今期の業績への影響も「精査中」(武藤常務)と見通せない状況だ。

 また、「エクソンの呪縛からは逃れられない」(証券アナリスト)との声が上がる。原油はエクソンから調達しなければならないことに加え、「エッソ」や「モービル」のブランド使用料、石油精製での技術指導料もエクソン側に引き続き支払うことになるためだ。エクソンは日本市場を見限りながらも利益を安定確保する一方、東燃は経営の自由と引き換えに多くの代償を払ったともいえる。

 すでに東燃は間接保有する自社株の売却も視野に入れており、売却先次第では、新たな再編の絵が描かれる可能性が高い。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 森川 潤)

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