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世界最大手のエネルギー会社、米エクソンモービルの日本グループに激震が襲った。全国紙が10月1日、「国内ガソリンスタンド撤退」などと報じたからだ。あたかも、スタンドがなくなるかのような印象を与えた。
同社は、国内で「エッソ」「モービル」「ゼネラル」のスタンドを約4100店舗展開する。そのため、「撤退したらカードが使えるのか」といった問い合わせが殺到した。傘下の東燃ゼネラル石油の株価は急落。同社の閉鎖的な体質もあり、波紋が広がっている。
ハチの巣をつついたような騒ぎとなったのは社内も同じだ。従業員には、日本グループ代表名でメールが送られ、スタンド経営者にも臨時の説明会が開かれた。報道を「誤報」と断定する発表も出た。
だが、結論からいえば、カードや看板は残り、エクソン系のスタンドがなくなることはない。
内情に詳しい複数の関係者によると、九州では、同社が土地や建物などを所有する約20店舗でスタンド売却が進む。ただし、看板は残り、石油製品の供給も続く。
なぜなら、九州のスタンド設備は老朽化が著しい。だが、地方のため収益性が低く、新たな設備投資をする気はない。近畿地方の製油所からも離れていて効率が悪い。そこで、商社などに資産を売り、運営から配送まで任せる狙いがある。
じつは、本社のある米国では、すでにこの戦略を採用。スタンド資産を売却し、油田開発など収益性の高い事業へ転換している。効率の悪い資産を売り、ブランドで稼ごうというわけだ。国内でも、ブランドを残しながらも、まずはスタンド、次には製油所の切り離しが射程に入っている。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 小島健志)