エビデンスに乏しい治療の
片棒をかついでいるメディアの罪

「現在、免疫療法専門のクリニックなどが行っている『樹状細胞ワクチン療法』や『NK細胞療法』といった治療法は、効果がほとんど認められていません。これらの研究自体は何十年も前からされており、試験管レベルで一部成功した例もありますが、対人間では効果を発揮しませんでした。エビデンスがない以上は、医師は安易に患者さんに治療を施すべきではありませんし、患者さんは標準治療を受けるのがベストといえます」(勝俣医師)

 標準治療(Standard of care)とは、長期にわたる臨床試験の結果、効果の証明された、その時点で最も成績の良い治療法のこと。Standardは日本語に訳すと「標準」の他に「定評/権威のある」と訳すことができる。

 にもかかわらず、免疫療法を受けようとする患者が多いのはなぜなのか。

「“良薬は口に苦し”ということわざがありますが、エビデンスに基づいての治療とはいえ、抗癌剤の副作用は辛いものです。それに、今はもう少ないと思いますが、かつては『素人は黙って私の言うことを聞け!』といった偉そうな医者も多く、根強い医療不信がありました。そんな中、一昔前に『抗癌剤は効かない』などという医療否定本が広く出回り、多くの患者さんが免疫療法に流れていった経緯があります」(勝俣医師)

 同時に勝俣医師は、免疫療法がこれほど野放しになってしまった背景には、メディアの責任も多分にあるという。それを象徴するのが、16年に起ったWELQ騒動だ。DeNAが医療について専門知識を持たないライターを格安で起用し、著作権を無視したコピペでまとめ記事を大量公開していた事件である。

「当時はWELQに限らず、インターネット上には『○○を食べれば免疫アップで癌が治る』といった、無責任に煽る記事ばかりが目に付きました。本来、医学という学問は難しく、一般の人にすれば退屈なものですが、『免疫』という言葉はイメージしやすくページビューも稼げますからね。それだけじゃありません。いまだに大手メディアでも“癌治療最前線”などと銘打った免疫専門クリニックの広告を見かけることがあります。結局のところ、広告主に対してはあまりきつく言えないということでしょう」(勝俣医師)