このような試行錯誤の積み重ねによって、文部科学省の「全国学力・学習状況調査」でも箕面市の成績は向上しつつあり、一方で、他地域との教育格差を生みつつある。

 しかし、それはやむなしだと筆者は考える。大きな格差が生まれるほど効果に違いが出るのであれば、取り組みを模倣し合い、格差解消を目指すことで、全体のレベルは底上げされていく。一時の格差を恐れて改善を望まないのは、教育の質の向上を自らが放棄することになる。

「ステップアップ調査」を全国で行うとしたら
予算は大学無償化の100分の1以下

「ステップアップ調査」のコストは、箕面市の財源と国の補助金によって賄われているが、一人あたり年間約3000円である。飲み会一回よりも安い費用で教育レベルが向上するならば、賢明な親は喜んで払うだろう。

 ところで、この「ステップアップ調査」を全国で行うことはできないのだろうか。全国の小中学生数は合計約978万人[*1]である。仮に、箕面市と同じく一人3000円として計算すると、総額で約293億円の財源が必要になる。

 ただし、全国の生徒数は箕面市の約1.1万人と比べて、およそ1000倍に及ぶ。規模の経済から考えると、一人あたりのコストは3000円から大幅に軽減できるだろう。

 ちなみに、大学無償化の話もちらつく昨今だが、全国の大学・短大・専修学校の授業料は年間約3.7兆円[*2]と、桁が2つ違う。そして、大学進学は義務ではないが、義務教育課程にある小中学生への投資は、平等で公平な税配分という観点から合理性がある。また、教育経済学の観点から、若い世代への投資がより大きな教育効果を生むことも期待される。

 大学無償化と異なり、「ステップアップ調査」はとても地味な取り組みである。そのため、これが国や地方の選挙を有利に働かせる目玉的な政策になるとは言い難い。さらに言うと、支持団体を敵に回す恐れもあるだろう。しかしながら、「ステップアップ調査」の費用対効果は箕面市の実績から、国・地方を問わず早急に進めることを筆者は強く進言したい。