そこで介護保険では、自己選択による尊厳を重視しました。先に触れた有識者研究会の報告書は「与えられる福祉」から「選ぶ福祉」という項目で、以下のように書いています。

「高齢者は社会的にも、経済的にも自立した存在であることが望まれる。社会の中心的担い手として行動し、発言し、自己決定してきた市民が、ある一定の年齢を過ぎると、制度的に行政処分の対象とされ(略)るというのは、成熟社会にふさわしい姿とは言えない」

 つまり、『花いちもんめ』『人間の約束』を観れば、介護保険創設に至る社会課題をほとんど網羅できることになります。

 もちろん映画にも、当時の政府文書にも「介護予防の強化を通じて、高齢者の『自立』を図る」なんて表現は見受けられません。むしろ、当時の資料を読むと、生活環境やサービスの自己選択が、「自立」「尊厳」に繋がると言っているわけですから、「自立」の意味が大きく変質してしまったと言えます。

最近の介護映画3編
介護保険の定着を描写

 では、今の介護はどうなのでしょうか。確かに介護殺人や介護自殺など、痛ましい事件や事故は後を絶ちませんが、最近では介護生活を明るく描いている映画も見受けられます。

 例えば、アルツハイマー型認知症になった母親を題材に、娘が撮影・製作しているドキュメンタリー映画『毎日がアルツハイマー』は時に明るく、時にシリアスに、母との生活や介護の苦労、日々の出来事を撮っており、ここではイケメンの介護職員が自宅を訪問して母親が喜ぶ場面がありますし、デイサービスなどの公的介護サービスが自然に登場します。

 2013年公開の『ペコロスの母に会いに行く』は、実話を基にしていますが、息子の岡野雄一(岩松了)が自宅では面倒見切れないとして、認知症になった母親(赤木春恵)をグループホーム(認知症対応型共同生活介護)に預けています。これは、認知症の高齢者を自宅に近い雰囲気で受け入れるサービス形態です。