2018年1月、「つみたてNISA」という制度がスタートしました。「つみたてNISA」は、国民に長期資産形成をうながす目的で金融庁の肝いりで始まった制度。NISA口座を開設して、一定の条件を満たす投資信託に「積み立て」で投資すると、20年間にわたり投資で得た収益が非課税になります。投資できるのは年間40万円まで。ビギナーでも安心して始められるシンプルな投資法です。とはいえ、どの投資信託を買ったらいいの?どの金融機関でやればいいの?など、いざ始めようと思っても、いろいろ迷ってしまいますよね……。そこで、本連載では、最新刊『つみたてNISAはこの7本を買いなさい』(ダイヤモンド社)を上梓した世界No.1投信評価会社トップの朝倉智也氏が、つみたてNISAとはどういう制度なのか、そのメリット、最強の資産形成法を賢く利用する方法等について、わかりやすく解説します。
商品選びは、コストをチェックすることが最も重要
投信には運用手法により「インデックスファンド」と「アクティブファンド」という分類があります。
インデックスファンドとは、日本株なら東証株価指数(TOPIX)や日経平均株価、先進国株なら「MSCIコクサイ」といった指数(インデックス)に値動きが連動するように運用する投信です。
一般に、インデックスファンドはプログラムされたシステムによって運用されるため、運用会社やファンドマネジャー(運用責任者)によってパフォーマンスが左右されることはほとんどありません。つまり、同じ指数に連動する商品ならパフォーマンスは、ほぼ同じと考えて構いません。
インデックスファンドは、組み入れ銘柄の選定のための調査などに手間をかける必要がありません。
このため運用にかかるコストが低く、ノーロードの商品や信託報酬が低い商品が多いのも特徴です。運用には差がないので、商品選びはコストをチェックすることが最も重要なポイントになります。
商品によって運用成績には大きな差がある
一方、アクティブファンドは、それらのインデックス(指数)を上回るパフォーマンスを目指して運用されるもののことをいいます。
アクティブファンドは運用会社のファンドマネジャーが組み入れ銘柄を選定するので、投資成果は運用方針やファンドマネジャーの手腕次第で大きく変わります。同じような運用方針に見える日本株投信でも、商品によって運用成績には大きな差があるものです。
このため、アクティブファンドを選ぶ場合は、ファンドの運用方針や過去の運用実績など、さまざまな観点で細かくチェックする必要があります。
また、アクティブファンドはインデックスファンドに比べて組入銘柄が少ない傾向にあり、数十銘柄程度の銘柄数で運用する場合もあります。集中投資をすると「値上がりするときは値上がり率も高いけれど、下がるときは大きく下落する」、つまりハイリスク・ハイリターンの運用になることも知っておきたいポイントです。
なお、アクティブファンドはファンドマネジャーによる企業調査など運用に手間がかかるため、コストはインデックスファンドに比べて高くなりがちなのも特徴といえます(下図参照)。
多くのアクティブファンドは、インデックスファンドに勝てない
こうしてインデックスファンドとアクティブファンドの違いを押えたところで、みなさんはどちらが魅力的だと感じるでしょうか?
「運用のプロが、より高いパフォーマンスを目指して運用してくれるんだったら、アクティブファンドのほうが儲かるのでは?」
そう考える方もいるでしょう。
しかし、プロが運用するからといって高いリターンが期待できるとは限りません。それどころか、実はアクティブファンドは、インデックスファンドに勝つことができていないものが多いのです。
下図は、日本株で運用されているアクティブファンドについて、TOPIXのパフォーマンスを上回ったものがどれくらいあったのかを調べたデータです。
たとえば2007年には、日本株アクティブファンドのうちTOPIXを上回るパフォーマンスをあげられたものは39%に過ぎませんでした。
このようにして毎年のデータを見ると、過去10年間のうち、アクティブファンドの半数以上がTOPIXを上回ったのはたった3回しかなかったことがわかります。 もちろん、アクティブファンドの中には高いパフォーマンスを出し続けている優れたものもあります。
しかし、優れたアクティブファンドを選び出すのは少々手間がかかりますし、さらに優れた運用を継続できているかどうかウオッチし続ける必要もあります。
インデックスファンドをおすすめする3つの理由
このため私は、つみたてNISAを利用する方には原則としてインデックスファンドを選ぶことをお勧めします(下図参照)。
インデックスファンドならコストを抑えた運用が可能ですし、「市場全体」を保有するわけですから、非常に多くの銘柄に分散して投資することができます。
また、アクティブファンドの場合、優れたアクティブファンドを探して購入後にウオッチし続けるという「時間と手間」がかかります。しかし、インデックスファンドなら投資について勉強したり、調べたりする時間と手間を省くことができます。
モーニングスター株式会社代表取締役社長
1966年生まれ。1989年慶應義塾大学文学部卒。
銀行、証券会社にて資産運用助言業務に従事した後、95年米国イリノイ大学経営学修士号取得(MBA)。同年、ソフトバンク株式会社財務部にて資金調達・資金運用全般、子会社の設立および上場準備を担当。
98年モーニングスター株式会社設立に参画し、2004年より現職。
第三者投信評価機関の代表として、常に中立的・客観的な投資情報の提供を行い、個人投資家の的確な資産形成に努めるとともに、各上場企業には、戦略的IR(Investor Relations:インベスター・リレーションズ)のサポートも行っている。他にSBIグループ各社の重要な役員を兼任する。
著書に『〈新版〉投資信託選びでいちばん知りたいこと』『一生モノのファイナンス入門』『ETFはこの7本を買いなさい』(以上、ダイヤモンド社)、『マイナス金利にも負けない究極の分散投資術』(朝日新聞出版)、『「iDeCo」で自分年金をつくる』(祥伝社)などがある。
※次回は、2月28日(水)に掲載します。