トヨタは2011年12月、BMWと燃料電池などの次世代技術車やスポーツカーの共同開発について合意したとの記者会見を行っていた。それから6年以上の間、多田氏はBMWとの協議を続けてきた。企画の初期段階では、トヨタとしてスープラにするか、それともミッドシップのスポーツカーにするか複数のチョイスがあったという。

LM-GTE仕様の90スープラの車内 Photo by Kenji Momota

 そうした中で、スープラに決まった理由は、86ファンからの熱い声だった。多田氏は86発売後、世界各地で86のファンミーティングなどに参加してユーザーと直接触れる時間を大切にしてきた。その中で、スープラ復活を求める声の多さに驚いたという。特に声が多かったのがアメリカだった。

 そして、90スープラの企画に社内で正式にGOサインが出てから、BMWと一緒に働く中で、トヨタとBMWそれぞれのクルマ作りの手法が大きく違っていたことに多田氏は大きな衝撃を受けた。

 例えば、設計図を描く回数では、トヨタは通常、開発当初でのラフなもの、次に車両実験を経て生産要件を加えたもの、そして量産用という3回。こうした方式に両社で違いがあるなど、根本的な設計思想の違いを感じたという。

 多田氏が過去に担当したトヨタ86の場合、当時の富士重工(現スバル)と共同開発したが、今回のBMWとの連携のようには、トヨタと富士重工との設計思想の差を感じなかったそうだ。

 90スープラのテストは、フランスのマルセイユにあるBMWテストコースを拠点に、公道テストを主体に行ってきた。その後、イタリアとドイツ、さらに昨年からはアメリカ、そして今年は日本での公道テストを本格化させる。

「欧州の本格的スポーツカーのレベルに90スープラの性能を引き上げるには、これまでトヨタが行ってきた手法以上に、公道でのテストが重要だと思います」(多田氏)

 また、90スープラの製造については、欧州での各種報道ではBMW Z4と共通で、欧州内のティア1(大手部品メーカー)の最終組み立てラインを使用する可能性が高い。