日本人にマネーゲームを禁じ、外資のプロが大儲け
熊谷 ライブドア事件の場合は、上場廃止であろうがなかろうが、堀江さんはじめ経営陣の資産はすべて没収されました。会社や旧経営陣への懲罰目的だったはずの上場廃止は、このように、ライブドアの決算書を信じ、市場で株を買った個人株主の損害に追い打ちをかける結果で終ってしまいました。ライブドアも、オリンパスと同様に上場維持しておけばよかったんですよ。
藤沢 そうですね。東証もライブドアの時は間違いだったと素直に謝ればいいのに、謝らないから過去との一貫性について、苦しい言い訳をオリンパスに関して用意しないといけないんですよ。
熊谷 会社にとっての上場のメリットは「資金調達・知名度向上・信用力強化」であり、経営者にとっては「株式の売却益」です。粉飾決算が公になった時点で、会社の上場メリットであった「知名度と信用力」は自然に剥がれ落ちてしまいます。また、制度として明文化されていないものの、事件を起こした会社の市場での資金調達は、証券会社が手伝わないので、実質できません。
上場メリットがないのであれば、実は、会社としては上場が廃止されたほうが楽チンで嬉しいんですよ(笑)。だから、もし会社や経営陣に対し、刑事罰以外に社会的制裁を加えたいならば、上場維持した上で「市場での資金調達の禁止」と「経営陣による株式売却の禁止」措置を数年間とればいいのです。
藤沢 上場廃止で、個人投資家は大損して、結果的にハゲタカがおいしいところを全部持っていったのですが、実はハゲタカは、世界一の投資家のウォーレン・バフェットのように、価値に対して価格が大幅に下がったときに冷静に買っただけのまっとうな長期投資をしたとも言えますね。
熊谷 フジテレビが、第三者割当増資のライブドア株やライブドアが保有していてニッポン放送株と引き換えに、ライブドアに支払った巨額の現金が、こうやって最後はハゲタカの手に渡ったという事実は、金融専門のメディアでは報道されていましたが、日本の一般の方はぜんぜん知りませんね。
藤沢 「汗水垂らして働いている人々がマネーゲームで出し抜かれてはいけない」と言って、東京地検特捜部はライブドアを強制捜査し、経営陣を次々と逮捕し、東証は速やかにライブドアの上場廃止を決定したわけですが、その結果、ある意味ではマネーゲームのプロ中のプロの外資系投資銀行やヘッジファンドが大儲けした、というのは何とも皮肉ですなぁ。
※この対談は全4回の連載です。 【第1回】 【第2回】 【第3回】 【第4回】
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