人気ブログ「金融日記」を執筆する藤沢数希氏がホストとなり、ビジネス界の注目パーソンと対談を繰り広げる新連載「藤沢数希の金融対談日記」。1人目のゲストとして、かつてライブドアで取締役を務めた熊谷史人氏に登場いただいた。同じく上場廃止が噂されたオリンパスへの率直の気持ちを語った第1回、外資のハゲタカだけが儲かった顛末を解説した第2回は大きな反響を呼んでいる。そして今回は、ついにライブドア事件の「違法性の認識」にまで話が及んだ。

私の給料は「ライブドアの株価連動制」でした

藤沢  ところで、ライブドアの自己株式の売買による粉飾決算ですが、裁判では決着が着いてしまって、司法の場では違法だということになったのですが、いま、何か言いたいことはありますか?

熊谷史人
(くまがい・ふみと) 
2002年ライブドア入社。2004年12月、最年少でライブドア取締役就任。ライブドアの資本政策や金融・投資ビジネスで中心的な役割を果たす。2006年2月、有価証券報告書の虚偽記載容疑で東京地検特捜部に逮捕。2007年6月、懲役1年、執行猶予3年が確定。現在、幅広い業種の会社に対するコンサルティング事業を展開。ツイッター・アカウント: @kuma1977

熊谷  裁判で違法という形で決着しましたので、素直に非を認めないといけないと思っています。ただ、当時は、連結の対象外であるファンドからの分配金を、自己株式の売却益として資本の部で処理しなければならないとは思ってもみませんでした。また、世間からは利益を出すために作ったファンドと言われていますが、そもそもライブドアの株価が、将来上がるか下がるかなんて分かりません。「株式分割」をファンドでの売却益を大きくするために利用したという誤った認識の人が大勢いるように思いますが、それも大きな間違いなんですよ。

   粉飾決算となった2004年9月決算の頃、私は資本政策やIRなど担当していて、実は私の給料は「ライブドアの株価連動制」だったんですよ。その頃の月給は80万円ぐらいだったので、株価が10%上がったら88万円みたいな。だから、どうやったら株価が上がるのかを一日中考えていたわけです。株価は需要と供給で決まるので、需要を喚起すれば必ず株価は上がると思ったのですが、突き詰めた結果「モノを売るのと同じである」という考えに至り、ごくごく一般的なマーケティング手法を資本政策の中に取り入れただけなのです。

藤沢  究極的には、自由市場の中での価格というのは全て需要と供給で決まりますね。

熊谷  どういうことかと言うと、例えばスーパーで1本100円のミネラルウォーターの隣で、24本箱入りの同じミネラルウォーターが1920円(1本当たり80円)で売っているわけです。同じものなのに、バラにするだけで、1本当たりのミネラルウォーターの価格が25%上がってるんですよ。にもかかわらず、平然とバラ売りのミネラルウォーターが売れていくわけです。これを株に当てはめたのですよ。

 しかも、当時は1株5万円という額面株式制度の名残りがあったために、倒産しそうな会社を除き1投資単位は数十万円以上の会社が多かったのです。私の周りには株式投資に興味があっても、最初から数十万円の株を買う勇気がなく、株式投資を躊躇している人が大勢いました。こうした中、株式分割で1投資単位を数千円まで引き下げ需要を喚起すれば、ライブドア株に人気が殺到して株価が上がっていくと思ったのです。

 つまり「株式分割」は、ファンドの売却益を大きくするためではなく、私個人の給料を上げることが目的だったんです(笑)。

藤沢  当時はインターネット証券が次々と出てきて、お金をあんまり持っていないけど株のトレーディングをしたいという人がたくさんいましたからね。まさに、熊谷さんのマーケティングが成功したわけですね。

 ところで、ホリエモンも熊谷さんもあの粉飾決算に関して、違法性の認識はなかったですよね?