「自分には集中力がないから、なかなかいいアイデアが出ない」
もしそう思っている方がいれば、今すぐ考え方を改めてほしい。ハーバード・メディカル・スクールで教鞭を執る「脳の専門家」スリニ・ピレイ博士によると、仕事や勉強中についついぼーっとしてしまう癖も、使い方次第では創造力の源泉になるという。
そんな集中力と表裏一体の関係にある「非集中力」の驚くべき力を活かすメソッドを明かした新刊、『ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法』から、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」を刺激し、創造力を引き出す「予想外の方法」をご紹介しよう。
計画的な夢想で疲労を回復し、感受性を高める
職場で窓の外をボーッと眺めるのは心地よいかもしれないが、創造性や生産性を高める理想的な方法とはいえない。
夢想に陥るのは、認知機能が疲労で限界に達しているというサインだ。脳が休息を求めていて、まるで断崖絶壁から落ちるように勝手に休憩を取るわけだ。しかし、計画的な夢想は有意義で疲労を回復する効果がある。断崖絶壁から自分で水に飛びこむようなものだ。ひとつ目の夢想はコントロールがきかないが、ふたつ目の夢想は想定されたものであるばかりか、計画的でもある。
こうした目の前の作業からの意図的で計画的な逃避は「意志的夢想」と呼ばれ、経験への開放性を高める。つまり、新しいアイデアや感覚に対する好奇心や感受性を高めることが証明されているのだ。
2012年、認知心理学者のベンジャミン・ベアードらは、レンガ、爪楊枝、ハンガーといったモノの意外な使い道を見つける能力をテストした。研究者たちは短時間で独創的な使い道をなるべく多く見つけ出すという課題を出した。2分間を1単位として4つのグループに実験を行い、ひとつを除く全グループに12分間の休憩を与えた。休憩中、ひとつ目のグループは集中力を要する作業を行い、ふたつ目のグループは集中力を要さない作業を行った(集中はしていなかったが、夢想する余裕はあった)。3つ目のグループはまるまる休憩を与えられ、4つ目のグループはまったく休憩を与えられなかった。どのグループがもっともクリエイティブだったか予想してみてほしい。