解説:顧客を「家族」にするためにリストを活用する
質問です。
皆さんの企業やお店では、顧客管理をしているでしょうか?
「お客様の名前や住所や電話番号、お誕生日を把握しています」
「顧客管理ソフトでしっかり管理しています」
こんな答えが返ってくると思います。
そもそも顧客管理の定義とは、なんでしょうか。一般的には「お客様の名前や住所、電話番号を把握している」ということになりそうです。
もちろん、知らないよりはましですが、管理しているだけであれば、実は残念ながら何の意味もありません。顧客リストは活用して初めて生きるのです。
顧客リストは経営資源です。リストを集めるために経営していると言っても過言ではないほどです。
通販会社の顧客リストは
立派な資産
以前こんな話がありました。
塾生さんには、通販会社も多くいらっしゃるのですが、ある経営者が会社を売却しようと思い査定をしてもらったところ、商品ではなく顧客リストに価値があると言われたそうです。
経営者は年商規模や売れている商品があることで会社の価値が決まると思っていたそうで「面食らった」とおっしゃっていました。
年商は、安く大量に売れば上げることはできます。問題はしっかり利益を出しているか、です。
そして、商品は今売れていたとしてもいつか売れなくなるわけですから、これまた問題外。実際「商品はいくらでも作れますから」と言われたそうです。その上で、最も重要視されたのは、顧客リストだったそうです。
一口に顧客リストと言っても名簿の数だけではなく、どんな属性の顧客がどれだけいるか、が重要です。買収先にしてみれば、自社の顧客の属性とマッチングができれば、一気に売上、利益が見込めるわけですから。
整理しますと、顧客リストは目に見える名前・住所・電話番号だけではなく、その顧客の属性がもっとも重要なのです。
たとえば「どんな悩みを持っているのか」「どんな問題を抱えているのか」「どんな消費欲求があるのか」「過去にどんなものを購入したか」で推測できます。
飲食業も顧客リストを
活用する時代に
「ビジネスモデル塾」の塾生さんの中に1ヵ月に1万人のお客様が来店される渋谷のラーメン店のオーナーがいるのですが、顧客リストがあるかを聞いたところ、
「常連さんの顔は覚えていますが、その人たちだってどこの誰だかはわかりませんよ」という返答が戻ってきてしまいました。
「……もったいない」
「超忙しくてお客様のお名前や住所を聞いていられないですよ」
実はこのラーメン屋さんのラーメンには、他店にはない特徴があります。それは、「香り」です。
確かに「香り」は重要です。横浜の中華街で焼き甘栗を一番多く売っている店は、その焼いた香りを扇風機で外に振りまいています。
こうしたヒントから、そのラーメン屋さんは「炙り味噌ラーメン」を作って大ヒットさせたのです。この店には間違いなく香り好きな人が来店しています。ですから、その人たちが喜びそうな特典をつけてリストを集めるのです。また、確かに繁盛店なので、顧客リストを作るには工夫が必要です。
たとえば、来店時にQRコードをかざすだけで、「あなたも『炙り味噌ラーメン会員』になれる!」と言う謳い文句をつけて集め、スモークサーモンやスモークチーズのトッピングを売ったりすることもできるかもしれません。
「1ヵ月何度も食べに来られるラーメン会員」を定額制で販売しても面白いかもしれません(実質的に売上が下がらないように価格設定をする必要はありますが)。
会員化(顧客化)ができるようになるとお客様との距離はグッと縮まるものです。お客様の嗜好や困りごとがわかれば、本来、商売はお客様に喜んでいただくために行っているわけですから、企業やお店側も誠心誠意、真心を込めてお客様と向き合うことができます。
自社の会員を育てることで
顧客→家族化できる
通りすがりのお客様ばかりでは、お客様が「どうして欲しいのか」「何を求めているのか」がわかりません。結果、的を射たサービスが提供できず、企業やお店は、方向性を見失うことになります。
飲食店で言うのであれば、「不特定多数の通りすがりの人にお料理を提供する」のでなく、「気心の知れた家族に食べてもらう」くらいの違いが出てきます。家族であれば好き嫌いもわかっていますし、健康も気遣うはずです。
ビジネスモデル塾を受講いただいた「金沢まいもん寿司」は、金沢を拠点に東京にも進出をしています。
木下孝治社長は常に、社員に「家族に食べさせたくないものはお客様に提供してはいかん!」と呼びかけています。真剣に素材を吟味し、真心を込めてお客様に提供することに全力を注いでいるのです。
余談ですが、木下社長は面白い経歴の持ち主で、実は寿司職人ではありません。飲食の仕事を始めた時は、なんと一級建築士として住宅を設計していました。
飲食業は「金沢で失敗すると設計の仕事に影響が出るかも」と、岐阜県で「でかねた寿司」と言う屋号でスタートしたそうです。「お客様=家族」という発想は、業界の外にいたからこそ、思いついたのかもしれません。
ストック化という面では、「金沢まいもん寿司」は現在、顧客リストを作成して通販につなげようとしています。
お客様を家族同然に対応している企業は、繁盛するものです。金沢のお店は、常に行列ができていて何時間待ってでも食べたいというお客様であふれかえっています。
このようにお客様を家族化するには、まずお客様のリストをしっかり取って、そのお客様の特性をしっかり見極めることからスタートしてみてください。
遠山桜子[とおやま・さくらこ](45歳)「すぐに売上1億円を達成させる」敏腕コンサルタント
「儲けるなんて簡単よ」が口癖。数々の企業にビジネスモデル(儲かる仕組み)構築の重要性を説いている。類まれな分析力とアイディアの持ち主で、三度の飯よりビジネスが好きというほどの自称ビジネスオタク。隙のない風貌から、近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、実は愛情深く、人を喜ばせることが好き。
藤堂華恵[とうどう・はなえ](40歳)漢方・整体サロンHanaオーナー
不妊で悩む女性を助けたい一心で、女性の悩みに応える漢方・整体サロンを横浜で2店舗経営。元ミスキャンパスだった美貌を生かし、自らが宣伝広告塔となり雑誌やチラシで集客はできているものの、儲かってはいない。年商6000万円。