日本の労働力人口のグラフが1990年代末に大きく屈曲したのは、女性の社会進出による正の効果と少子高齢化による負の効果の大小関係が逆転したためだ。

 また、1990年代初めに日本の平均労働時間が大きく減ったのは、週休二日制の普及による。その後の減少率の低下はパートやアルバイトの増加によるもので、フルタイム労働者の労働時間はあまり減っていない。

対人サービスにシフトした経済
GDPでは真の成長が測れなくなった

「実質GDP成長率の低下」=「経済停滞」とは言えない第二の理由は、経済発展とともに、経済活動の中心がサービスにシフトしていくからだ。

 一国の経済発展は、必要度の高い財を生産する産業から順に生産性が上昇し、やがて生産性上昇による供給過剰(需要の相対的な減少)でこれらの産業が縮小していく過程である。必需品の筆頭は、食べ物、次が身の回り品である。

 食料品を生産する農業は経済発展の初期に生産性が急上昇するが、需要の増加が緩慢なため、産業としては縮小してゆく。

 次に工業化が進み、機械化や技術革新により生産性が上昇する。しかしいくら性能が良くても何十台も自動車や冷蔵庫を買う人はいないので、需要が追い付かず、やはり産業としては縮小に向う。住宅も同じである。

 こうして、先進国では例外なくサービスが生産と消費の中心になる。

 ところが、サービス業は製造業より生産性が上昇しにくい傾向がある。

 いま、ある国にA産業とB産業の二つがあり、GDPに占める比率が50%ずつだったとする。そしてA産業の生産性上昇率が年率5%、B産業の生産性上昇率が年率1%だとしよう。その場合、この国のGDPの成長率は年率3%である。

 次に、各産業の生産性上昇率が同一のまま、GDPに占めるA産業の比率が25%に低下し、B産業の比率が75%に上昇したとする。すると、この国のGDPの成長率は2%に低下する。

 この場合のB産業がサービス産業だと考えれば、マクロの経済成長率が低下することが、「経済が停滞している」ことの必要条件でも十分条件でもないことがわかるだろう。

 サービス化が進む先進国の経済成長率が1~2%くらい低下したからといって、資本主義が「新たな段階に入った」と考えるのは、早計である。