英語の授業が英会話中心になったと聞くと、このグローバル社会に適した素晴らしい対応のように思われるだろう。しかし、英会話中心というのはたんにおしゃべりの仕方を身につけるようなものであり、頭を鍛える勉強ではなくなってしまうと榎本氏は警鐘を鳴らす。

 かつての英語の授業では、英文学を読んだり、文化評論を読むことが中心だった。その理解や訳出の過程で英語や日本語の知識を駆使し、国語で鍛えた読解力を総動員することで、言語能力を鍛えることができた。

 思考は言語でするので、言語能力が鍛えられると、自然と思考力も高まる。文学や評論の内容を理解することで教養も深まる。だからこそ英語の勉強はそのまま知力を高める勉強になっていたのだ。かつて英語ができる子は他の教科の勉強もできる子が多かったのはそのためである。

 いっぽう、スピーキングの訓練で、読解力や推論力、教養は身につかない。会話を重視した英語教育では、日常会話(おしゃべり)を学んでいるだけである。その程度の英会話力を身につけるために時間と労力を費やしてしまってよいのだろうか。

 もちろん英語で流暢に会話ができることに意味がないとはいわないが、思考力が乏しく中身のない会話になってしまっては、真のコミュニケーションとはいえないだろう。

あの孫正義氏の英語力は意外にも…

 ソフトバンクグループの創業者で、日本を代表する実業家としても知られる孫正義氏。世界で活躍する孫氏こそ、高い英会話力の持ち主だと思われるだろう。

 しかし、外国人との交渉や会議に立ち会った元側近によると、あの孫氏が話す英語は決してネイティブのような流暢な英語ではなく、日本語なまりが強い英語で、さらに話す速度が非常にゆっくりだという。

 英語が話せる大人同士の会話では、通常1分間に160~180語程度なのに対し、孫氏の場合は1分間あたり100語ほどで、これはアメリカの母親が子どもに話しかけるときの速度だそうだ。