不安障害になるのは
人間の進化の過程では自然なこと

「実は、不安障害に関わる強い恐怖心を感じたり、過度の心配性に陥るのは、人間の進化の過程において、危険から身を守るうえで適応的な反応だということが、進化心理学の立場で言われているのです」

 そう田島教授は指摘する。

 たとえば、アイコンタクトが取れない。知らない相手に不安を感じる。パニックやこだわり、心配性なども、いまの社会では「不適応」の烙印を押されてしまいがちだ。しかし、進化の過程では、適応的で自然なことなのだという話は、とても興味深い。

 そんな中で、わかってきたのは、不安や恐怖、情動のコントロールに関係する脳の部位の仕組み。恐怖心と体の反応を起こす「扁桃体」が興奮すると、不安や恐怖の反応が出る。一方、前頭前野は、情動にブレーキをかける。

「心理学的には、ポジティブな感情とネガティブな感情に分けられます。ポジティブな感情をコントロールしているのが、左側の前頭葉。ネガティブな感情をコントロールしているのが、右側の前頭葉。不安障害は、ポジティブな感情は変わらないが、ネガティブな感情が高まっている。一方、うつ病は、ポジティブな気分が落ちていて、ネガティブな感情も高まっている状態。これらを元に戻すことが、不安障害やうつ病の治療になるのです」

 最近わかってきたのは、「生まれ持った遺伝的なもの」であるケースと、ある時期から条件反射や学習で扁桃体が過敏になったり、鈍感になったりするケースがあること。不安になりやすい人は、脳の扁桃体が大きく、反応も敏感になっているという。

「元々心配性の人に、怖い絵を見せるなどの刺激を与えると、扁桃体が活性化されやすく、過度に反応するんですね。ところが、高いところで慣らしていると、怖くなくなる。恐怖感は、トレーニングすることで変わるんです」