認定放送持株会社制度で守られるテレビ局の既得権
熊谷 その通りです。しかし、ライブドアに買収されそうになったり、その後に楽天のTBS買収騒動もあり、資本主義経済の意味を理解したテレビ局の幹部は、なんと政治に働きかけ、認定放送持株会社制度という新しい法律を作ってしまいました。
この持株会社になると、ひとりの株主は3分の1以上の株式は保有できなくなります。フジテレビとTBSが認定放送持株会社に移行しました。どの株主も3分の1以上保有できないので、経営者にとっては完全な買収防衛策です。ふだんは低俗なお笑い番組ばかり流しているくせに、こういう時だけは「報道の公共性」という錦の御旗を振りかざし、自分たちだけは競争を巧妙に排除して、自らの既得権益を守りぬくのですよ。
そうやって株価を抑えこんでいるくせに、世の中に対する影響力は依然として非常に大きいのです。
藤沢 確かに影響力の点では、依然としてテレビが「世の支配者」かもしれません。しかし、インターネット・メディアが毎年成長している中、テレビ局はどこもジリジリと広告収入を減らしていて、将来的にはテレビの地位は今よりずっと低くなると僕は思っています。今の20代、30代の主な情報源はインターネットなので、彼らが中高年になるころには、ネットとテレビは完全に逆転していると思うのですが、いずれにしても今後10年とかのスパンで考えれば、テレビはやはり圧倒的に強いメディアだと思います。
テレビの寿命はあと10年?
熊谷 そうですね、あと5~10年ぐらいはメディアとしての価値はあるでしょうね。だけどカウントダウンは始まっています。だから、フジテレビの株主のことを考えれば、今からでも、フジテレビの持つ圧倒的な視聴者数と影響力を使い、「Yahoo!」のようなポータルサイトや、楽天(3月2日現在の時価総額=1兆500億円)のようなECサイトを作ればいいのです。
だけど、テレビ局の人たちは、企業価値を高めていくことなんて興味がなく、未だに、世論をコントロールし、世の中を支配することしか考えていないのです。総理大臣がコロコロ変わって、日本の未来のための政策を政治家が打ち出せないのは、メディアの人たちのこんな考え方のせいでもあると思います。
藤沢 さすがにテレビ局の人たちがそこまで考えているとは思いませんけど(笑)。しかし、テレビ局で働く人たちはみんなサラリーマンですから、もしトップがホリエモンになっていれば、何も言わなくても、どうやったらホリエモンに好かれるかを必死こいて考えて、番組に色をつけていったと思いますね。それがサラリーマンの習性ですから。そうすると、やっぱり日本の景色はずいぶん違ったものなっていたでしょうね。
歴史に「イフ」はありませんが、ひとつだけ確かなことは、AV女優の社会的地位がもっと上がっていたに違いないということです(笑)。