非常に残念ながら、5人の子どもの命を失いました。ですから、私はこの教育が100%良かったわけではないと考えています。しかし、14の学校、約3000人の子どもの命を守られた背景として、学校の先生方の貢献が大きいことは間違いありません。今お話ししたことを釜石の子どもたちに教え、加えて学校の先生が綿密な避難訓練をし、知識を与えてくれたから最適な行動をとり、結果として多くの子どもが生き残ることができました。釜石小学校はみんな家に帰っていて状況は千差万別だったにもかかわらず、それぞれがベストの対応ができたのは知識ではなく、姿勢があったからです。私の役割は、最初に防災への意識のなかった先生に、はずみをつけただけのことです。

不安がるだけで他人依存、受け身のまま
首都圏の人々にこそ「己」を知ってほしい

――これから首都圏や東海・東南海・南海地方では、巨大地震の発生が懸念されています。今、どんな防災対策や教育が必要でしょうか。

 今お話しした「避難三原則」は、主体的な姿勢のもとで積極的な情報収集や判断をし、自分ができる限りのことに懸命に取り組むよう求められます。しかし、これが今、日本の防災に欠けています。

 首都直下型地震の発生確率が4年で50%などと言われていますが、右往左往しても仕方ない。所詮それも想定です。そこに向かって最善の策を皆が整えていくことしか自分たちにはできないにもかかわらず、準備もせずに不安がっている人が多い。それ自体が間違っています。自分の命を守ることでの他人依存、教えてもらおうと受け身で、何もできていないんです。勉強せずして大学に入りたいと言っている受験生のようなものです。役所依存をして、役所のせいだと言いながら死んじゃしょうがないでしょ。

 ただ単に、防災教育のための授業時間を確保すればいいわけではありません。なぜなら、先生方は何を教えるべきかわかっておらず、ハウツーしか教えられないからです。多くの学校の先生方が、不安だから防災教育をやらなきゃいけないと私に話を聞きにいらっしゃいますが、実際に釜石のようにするのは無理です。

 隣の子どもがすごくいい子で、うちの子もそういう子に育てたいと思い、その方法を聞いてそのまま育てたとしましょう。でも実際に、いい子には育ちません。周りの環境に左右されますから、社会や大人が変わらなきゃ、マニュアルをもらっても無理なんです。