車社会の米国で、ガソリン価格が個人消費に与える影響は極めて大きい。高騰は大統領選の論点にも浮上した
Photo:REUTERS/AFLO

 原油価格の高騰が、世界と日本の景気に対する、大きな懸念材料となりつつある。

 2月下旬、北米市場の原油価格(WTI)は1バレル110ドル、欧州市場(ブレント)は同120ドルを突破。それぞれ、昨年10月から約45%、約25%の上昇だ。日本のエネルギー価格の指標となるドバイ原油価格は、このところWTIとブレントの中間程度で推移してきたが、現在はほぼブレントと同等で、過去最高水準にある。

 最大の要因は、イランを中心とする中東情勢の緊迫である。特にアジア地域は、新興国の需要が底堅い上に中東依存度が高いため、影響を最も受けやすい。

 需給自体は、逼迫しているわけではない。米国、欧州、日本など世界各国で行われている超金融緩和でだぶついた投機・投資資金が、中東情勢を材料として流れ込んでいる面が大きい。「15ドル程度が、中東情勢とそれに伴う資金流入による押し上げとみられる」(永尾英二郎・住友商事コモディティビジネス部商品市場チーム長)という。

 すでに、景気への悪影響は出始めた。米国では、ガソリン価格が消費減退を招く分岐点とされる1ガロン4ドルに迫り、1月の実質個人消費支出は前月比横ばいとなった。FRB(連邦準備制度理事会)は、インフレを警戒し、追加緩和で慎重姿勢に転じた。原油価格が10ドル上がるとGDP成長率を0.2~0.3%押し下げるといわれるが、米国の景気回復が腰折れすれば、世界に波及しかねない。

 1.5兆円に及ぶ1月の日本の貿易収支赤字も、エネルギー価格高騰による部分が大きい。原発停止により原油とLNG(液化天然ガス)の輸入量が拡大したところに、価格上昇が追い打ちをかけた。なお日本の場合、LNG価格は基本的に原油価格に連動する。円安も、この面ではマイナスに働く。「輸出が頭打ちになっている状況下で、高騰が続けば国内経済の足を引っ張ることになる。特に復興需要が一巡する年後半に影響が露呈する」(木内登英・野村證券金融経済研究所経済調査部長)。

 今後の相場で最も蓋然性の高いシナリオは、“このままジリ高”である。「水準としてはすでに“行き過ぎ”であり、市場にも高値警戒感が出つつあるため上昇幅は限られる」(大越龍文・野村證券金融経済研究所シニアエコノミスト)が、一方で、供給不安が完全に消えるか、欧州危機の再燃などで景気減速・需要減が明らかにならない限り、大きな下落も予測しにくい。

 さらに、もしイランがホルムズ海峡封鎖に至れば、未曾有の高騰となりかねない。今のところその可能性は大きくないとみられているが、3月5日の同国の選挙で強硬派勢力が圧勝するなど、予断を許さない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 河野拓郎)

週刊ダイヤモンド