西新宿に実在する理容店を舞台に、経営コンサルタントと理容師が「繁盛する理容室」を作り上げるまでの実話に基づいたビジネス小説。「小さな組織に必要なのは、お金やなくて考え方なんや!」の掛け声の下、スモールビジネスを成功させ、ビジネスパーソンが逆転する「10の理論戦略」「15のサービス戦略」が動き出す。<理容室「ザンギリ」二代目のオレは、理容業界全体の斜陽化もあって閑古鳥が鳴いている店をなんとか繁盛させたいものの、どうすればいいのかわからない。そこでオレは、客として現れた元経営コンサルタントの役仁立三にアドバイスを頼んだ。ところが、立三の指示は、業界の常識を覆す非常識なものばかりで……>すでに15回にわたって連載した『小さくても勝てます』の中身を、ご好評につき、6回分を追加連載として公開します。
たとえ価格が高くても
お金を払ってくれる人はいる
「でも、みんな安い店に行くんじゃないですか?」
「あのな、2つ大切なことを教えたる。1つは価格、もう1つは価値」
「価格と価値ですか?」
「そうや、価格と価値や」
立三さんの説明によると、経済学では〈需要曲線〉というのがあるらしい。
ある商品やサービスに関して、安いとたくさんの人が買いたがり、高いと少ない人しか買いたがらない。
それをグラフにしたものだ。
みんな、安い商品やサービスが出てくると、「価格を下げないと競争に負ける」と思いがちだが、実際にはそうではない。需要曲線が存在するということは「高い価格でもお金を払ってくれる人がいる」ということだ。
「高価な店や安い店が混在しているのは、中味がそれなりなら多様性があって社会としてはいいことや。だから、高い理容室だからダメと思わんと、堂々としてたらええ」
「はい!」
「しかも、今、ザンギリには常連のお客さんがいるんやろ?」
「はい」
「彼らは4500円払ってくれるんやな?」
「そうです」
「それで君たちは飯を食えてるわけやな?」
「はい」
「ということは、4500円を払ってくれるお客さんは、ちゃんと存在するということやろ?」
「そのとおりです」