退職金は一時金と年金と
どちらがトクか

定年後の手取りを増やす退職金の受け取り方「たった1つのコツ」

 今年は年明けから3月まで、年度末で定年退職する人のマネー相談が例年より多かった。みなさん、退職後の生活設計に加え、退職金の受取り方法についてアドバイスがほしいと言う。

 1年ほど前に当欄で書いた『退職金の受取りは「一時金」と「年金」のどちらがトクか』のコラムを読み、「受け取り方法選択のときが来たら相談しようと思っていた」ようだ。

 退職金を「一括」か「年金」か、または2つの「組み合わせ」など、受け取り方法を選べる会社は少なくない。選択肢がある場合、多くの人は「年金」が有利と考える。年金形式だと、勤務先または企業年金が引き続き運用してくれるため、運用益の分、受取額が増えるからだ。

 しかし、「手取り額」に着目すると、必ずしも「年金受け取り」がトクになるとは限らない。年金形式で受け取ると、再雇用で働く60歳代前半は給与との合計額、65歳以降は公的年金との合計額で課税される。

 完全リタイア後の65歳以降は、所得に応じて国民健康保険料と介護保険料もかかるため、年金収入が増えるほど、2つの社会保険料の負担率が高まり、手取りを目減りさせるのである。

 1年前の当該コラムでは、「全額一時金、全額10年確定年金、両方の組み合わせ」と「全額一時金、全額15年確定年金、両方の組み合わせ」というケースで手取り額を試算した。「年金形式」の運用率2%だと、「10年受取り」「15年受取り」いずれのケースも「一時金形式」が有利という結果になった。

 私のもとへ相談に訪れた人は「一時金受取りが有利になるというのは思ってもいなかったので衝撃だった。それは何となく理解できたけれど、コラムのケースと条件が違っているから、自分の場合はどう判断するといいのかわからない」と言う。

 同じように思っている人も多いと思うので、今回は「一時金形式」がトクになる基本の仕組みをお伝えしよう。たった1つのコツを知っておくだけで、定年後の手取り額を増やすことが可能なのである。