インドと中国が頭を痛めている貧困層の問題、民主主義と経済発展の関係などの議論は常套と言えば常套だが、やはり触れずに済ませられないところだ。だが、産業競争力の比較と分析には、やはり目を奪われてしまう。

 さらに、インドに対する日本企業の投資が「中国からほぼ15年遅れている」、「日印間の貿易額は日中間のわずか20分の1」、「『知財』『政治リスク』ではインドがやや優位」、「人材交流では中国が大きくリード」といった指摘からは、冷静な目線を感じ、好感をもった。

 インドの議会制民主主義が「経済発展のブレーキにもなる」、労働問題においてはインドが「中国より社会主義的」といった指摘には、ある種の意外さを覚えた。

中国国民の精神状態を描く

 『インドvs.中国』が企業関係者など経済人向けの書物だとするなら、同時進行の形で読んでいるもう一冊の本は、知識人好みの本と言えよう。中国の光明日報出版社が出した『郁悶的中国人』である。書名は日本語に訳すと、「憂鬱な中国人」になる。著者は北京語言大学教授でもある作家、梁曉声氏だ。

 かつて私と同じく黒竜江省に「下放」した経歴をもっており、同時代の人間として感覚を共有できる。

 1978年に改革・開放路線を歩み出してから、中国の改革の最大の特徴は経済発展を先行させ、政治改革が大きく遅れていることだ。急速に豊かになってきた中国だが、その富の配分には著しい不公平が存在する。官僚の腐敗に対する民衆の憤懣、拡大する格差による不公平感が社会の隅々に浸透している。