年収数千万円のモルガン・スタンレー社員が残業代を請求したら

 年収数千万円もの賃金をもらう外資系の金融会社やコンサルティング会社の社員も、労働基準法上の労働者となります。年収数千万、1億円もらっているとしても、時給で働いていることになるのです。

 たとえば月給183万円の賃金を得ていたモルガン・スタンレーの社員は、リストラされた後に残業代の請求訴訟を起こした事件があります。自分は労働基準法が適用される労働者であると主張し、早朝のブレックファーストミーティングへの出席は時間外労働だとして2年分の残業代を請求したのです。

 月給183万円を時給に直すと、約1万数千円になります。毎朝1~2時間、ブレックファーストミーティングを重ね、割増賃金も足し合わせれば、2年間で1000万円近い残業代になるでしょう。

 もちろんその人が管理監督者であったり、時間外労働が発生しない裁量労働制をとっていたなら問題はありませんでした。しかしその人はスペシャリストとして働いていたため、労働基準法上の時間規制が及んでおり、残業代を請求する権利を有していたのです。今の法制度をそのまま適用すれば、会社が勝てるわけはありません。

 しかし結果として、その労働者は裁判で負けてしまいました

 中小企業ではよく、固定の残業手当をつけることがあります。たとえば基本給20万円に5万円の残業手当をつけ、毎月25万円の給料を支払うわけです。すると労働者は5万円以内の残業代は請求することができません。

 もちろん、この仕組みを使うためには雇用契約か就業規則で明確な数字を示すことが必要です。どこまでが残業代なのか、はっきりと分けなくてはならないのです。