ユーロ圏で
仮想通貨が普及する理由

 では、さらに一歩進んで、私の送金がA氏に着金すると同時に、ブロックチェーン上で自動車の所有者が「大村」になるように移転登録が済んでしまったらどうでしょう。

 このケースでは、自動車検査登録事務所などの第三者が不要になります。
 すなわち、理論上は公務員の数を減らすことが可能になるのです。

 そして、もしユーロ圏各国が本気で公務員改革に取り組もうとした場合、このスマートコントラクト技術を活用する可能性は十分にあると私は考えます。

 なぜなら、前述のとおりユーロ圏はギリシャ危機を経験しているからです。

 日本は、21世紀になった今なお、印鑑という習慣を撤廃できずに、デジタル契約書を印刷して捺印し、わざわざ郵送で契約書を送付するという、外国人から見たら非効率としか見えないことを日常的にしていますが、効率化を優先する外国では、スマートコントラクトでブロックチェーンに書き込まれた契約を自動履行してしまって、台帳の作成や管理に携わる人間の数や労力を大幅に省力化する方向に舵を切っても不思議はないと考えるのは私だけでしょうか。

 ちなみに、スマートコントラクト属性と呼ばれる代表的な仮想通貨は、イーサリアムのほかにもネム、リスク、ネオ、エイダなどがあり、スマートコントラクトは今後の仮想通貨、そしてブロックチェーンの最重要技術の1つとして注目度が増していくと私は考えています。

 さて、この仮想通貨ですが、スマートコントラクトだけでなく、さまざまな分野での活用が期待されています。その1つが、すべてのものがインターネットにつながるIoTの時代における決済手段です。

 もっとも、IoTともなると、仮想通貨やブロックチェーンだけで実現するのは不可能です。当然、AIと連動しなければなりません。

 このAIは、「ディープラーニング」と呼ばれる自力学習をする「子どものAI」と、人が一から教えて丸暗記させる「大人のAI」に分かれます。

 同じAIといえども、両者でどれほどの違いが出るのかは、第1回連載の中で「子どものAI」であるGoogle翻訳と、「大人のAI」である別の翻訳サービス(X翻訳)に同じ英文を日本語に翻訳させて、まったく異なる結果になるケースを紹介していますので、そちらを併せてお読みいただけたら幸いです。