実物通貨と仮想通貨、日常と非日常、ヒトとAIの境界線がどんどんなくなりつつある今、私たちはどうやって生きていけばいいのか?
構想・執筆に2年。「愛」がテーマという注目のエンターテイメント小説『マルチナ、永遠のAI。』が話題を呼んでいる。ビットコイン、ブロックチェーン、ディープラーニング……正確な技術論と、その道の世界的権威の見解をもとに緻密に描いた作品で、SFではない、小説風の解説書という。
『エフエムふくやま』でも、「ページをめくる手が止まらなかった」と紹介され、映像化したいというオファーが舞い込んできたという大村氏の特別寄稿をお送りする。
(構成・寺田庸二)

仮想通貨は、ユーロ圏で真っ先に普及する?

イーサリアム(スマートコントラクト)は
公務員比率を減らせるのか?

 2018年3月現在、世界各国は「仮想通貨とどう向き合うべきか」の答えを出せていないように思います。

 本音は、仮想通貨などなくして、法定通貨をブロックチェーン対応のデジタル通貨にしたいところでしょうが、そうなると金本位制をドル基軸に変えたほどの大改革になりますので、一朝一夕にできることではないのは考えるまでもありません。

 そうした中で、各国がフィンテック(金融と技術の融合)に取り組むにあたって、すでにブロックチェーン技術で発行されている仮想通貨というのは、ある意味、フィンテックの最終形態までの「つなぎ」としては格好の通貨であると評価できるのではないでしょうか。

 この仮想通貨でよく取り上げられるのが、売買決済と銀行送金の分野での活用ですが、仮想通貨をある程度知っている人の間では、こうした分野とはまた違う側面でイーサリアムという通貨に期待が集まっています。

 2010年にギリシャの財政悪化、厳密には不健全な状態を長年にわたって放置してきた粉飾決算が明るみに出ました。
 俗に言う「ギリシャ危機」ですが、このときに多くのマスコミが、
「ギリシャ危機の原因は、ギリシャの公務員比率は25%もあるからだ」
 と報じました。

 ところが、実はギリシャの公務員比率が世界で突出して高いわけではなく、ユーロ圏の大国であるドイツやフランスもほぼ同様とされています。

 ですから、ギリシャの場合は公務員の数というよりも、公務員の勤務時間の短さや基本給の3倍とされる諸手当といった厚遇が問題だったわけです。

 いずれにしても、ここではユーロ圏と一括りにしますが、ユーロ圏の公務員比率はアジアやアメリカと比較すると高い傾向にあり、公務員の削減、もしくは公務員報酬の減額は大きな課題となっています。
 だからこそ、私はそのユーロ圏で仮想通貨が真っ先に普及する可能性は十分にあると考えています。
 そして、それを実現するのが、スマートコントラクト属性のイーサリアムになると考える専門家は少なくありません。