(僕は何をしているんだ。自分に何が起きているんだ!?)

 上司の言われるままに産業医のところへ行くと、診断結果は「うつ病」だった。会社を休職することになった彼は、うつ病に関する情報をインターネットで調べていた時に私のブログを見つけて読み、相談したいと思ったそうだ。

 和也さんの話を聞きながら、私は回復まで時間がかかりそうだと思った。

「半年くらいかかるかもしれません」

 私がそう言うと、和也さんは諦めたような表情を見せ、小さく「はあ」と頷いた。

「週1回、2時間ずつカウンセリングしていきましょう」と言いながら今後のスケジュールを提示すると、彼は再び小さな声で「はあ」と答えた。

環境が変わる
新年度が危ない!

「うつ病の中でも、もしかしたら『新年度うつ』ではないか?」――そう思ったのは2回目のカウンセリングの時だった。新年度うつは、その名の通り新年度に発症するうつ病のことである。

 新年度を迎え、職場ではあらゆる環境が変わる。部署が変わり、人間関係が変わる。不慣れな仕事を任され、戸惑う人も多い。転勤や駐在勤務等により、生活環境が大きく変わる人もいる。

 そういった環境の変化が大きなストレスとなり、うつ病を誘発する。和也さんの場合、4月から大きなプロジェクトに参加し、環境が大きく変わったことが「うつ病」発症の原因だった。仕事の内容を尋ねると、和也さんはこう答えた。

「大手企業と組んで基幹システムを入れ替えるプロジェクトです。受注金額が大きい割には納期が短く、残業が続いていました。そのせいで疲れているのだと思っていたんです」

 正直なところ、基幹システムが何なのか私にはわからない。ただ、彼の口調は軽く、その仕事にやる気を出していたことは明らかだった。しかし、その後も仕事の話を聞いていくうちに自分を卑下するような言葉も多く出てきた。

 例えば「僕なんかはチームの下っ端ですからね」である。この「下っ端」という言葉から、彼が自分を低く評価している様子が感じ取れた。他にも「自分は能力が低い」「ダメだ」「できない」「知らない」「ついていけない」といった表現も多く、「自分には無理な仕事かもしれない」とうつむいた時もあった。

 彼は会社では優秀な方だった。いわばエリート候補であり、だからこそ大きなプロジェクトの一員に選ばれたのである。メンバーになった当初は、「会社の期待に応えよう」「上司にいいところを見せよう」といった意欲があったはずだ。