アメリカでは、ロケットを製造するメーカーとしてボーイングやロッキードなど、超大手企業が名を連ねています。ところが、ロケット製造としては後発の新興企業だったにもかかわらず、スペースXは商業衛星の打ち上げサービス市場で大きな躍進を遂げることになりました。

 宇宙輸送を担うロケットとは、言ってみれば荷物を運ぶトラックのようなものです。例えば、スカパーJSATの通信衛星「JCSAT─16」を打ち上げたり、国際宇宙ステーションにNASAから物資を補給したりする際に、スペースXのロケット、ファルコン9が使用されています。

 しかも、スペースXのロケットは、その市場シェアを急速に伸ばしているのです。

 スペースXが大きくシェアを伸ばしている理由は、低コストにあります。スペースXは、低コストでのロケット製造を可能にするために、独自の取り組みを進めてきました。そのひとつが、通常は他社から購入するエンジンやコンポーネントから部品にいたるまで、ほとんど自社で開発していること。これが、コストダウンにつながっていると考えられています。

 実際、通常の大型ロケットの打ち上げ費用は100億~200億円くらいだと言われていますが、スペースXの打ち上げは60億円台。ロケットの再利用でさらに30%削減予定で、ロケットの価格破壊と言われています。

 当初から量産を視野に入れて、ドイツの自動車メーカーの幹部をヘッドハンティングしていました。また、IT開発のスタイルを取り入れて製造工程を分析、製造を効率化しています。従来のロケット開発には、まずない視点でした。

 さらにNASAをはじめ、航空宇宙産業の経験者を積極的に採用して、すでに6000人規模の会社になっています。

 さらにスペースXは、独自の衛星ネットワーク構築にも挑もうとしています。2015年1月、ワシントン州のシアトルで行われたイベントで、「インターネット衛星ネットワークの運用計画」を発表しました。

 世界中を高速インターネットで切れ目なくつなげ、全地球上のコネクティビティーを実現するという大規模な衛星ネットワークの運用計画で、世界中に衝撃を与えました。

 2016年11月には、米連邦通信委員会(FCC)に対して正式に、4425機の衛星を製造して打ち上げる計画を申請しています。

 創業から15年。スペースXは宇宙への輸送のみならず、衛星を使った地球ネットワークの構築を手掛ける大きな存在感を持った企業へと成長してきているのです。