そんな現状の底上げを陰でサポートしているのが、コンサルティング会社のキャンサースキャン。国や市町村のがん検診受診率向上の事業を始めて10年になる。09年度、ある市の子宮頸がん検診対象者のうち、25歳女性をターゲットにして(*4)改善に取り組んだところ、前年度の受診者7人(受診率0.8%、対象者846人)を152人(受診率17.8%、対象者853人)に、約22倍も増加させた。対象者に対する受診率はまだまだ低いが、一気にこれだけ増えたのは興味深い。

 同社では、今年度も36都道府県のサポートに入る。いったい、どんな手法を用いるのか。同社の福吉潤代表取締役に、その考え方を教えてもらった。

*4)子宮頸がんは25歳から罹患(りかん)率が急上昇する。

読み手の心に響くメッセージは
多様な価値観ごとに書き分ける

自治体が作成する子宮頸がん検診を勧めるチラシの例。「どこを改善すればいいか」話し合うためのツールの一つ

 キャンサースキャン代表取締役の福吉さんはこう言う。

「弊社では検診受診率向上の事業全体に、マーケティングのフレームワークと行動科学の理論を取り入れて、検診受診者の行動を変えていきます」

「行動科学」とは、人間行動の一般法則を科学的に見いだそうとする学問で、心理学・社会学・人類学・経済学・政治学・精神医学などから、総合的に見ていく(*5)

 同社では全国で自治体向けの無料研修会を繰り返している。研修会では、主に検診の受診勧奨ツールの作成法について、そのポイントを話す。

「まず、心構えとして『こちらが正しい情報を伝えれば、読み手は正しい行動を起こす』と考えがちですが、そうではありません。私たちはその情報が正しいと思うからこそ行動するものです。つまり、『正しい知識と思ってもらうこと』が大切です」

 アヤシイ情報やオレオレ詐欺のように、たいてい、間違った情報のほうが見せ方はうまいからだ。

*5)三省堂・大辞林より