さらに、「現代は情報量がとても多く、メッセージが届きにくくなっている」「人間は興味のある言葉しか目に入らない」を前提に、届けたい相手の価値観に合わせたメッセージやデザインでのツール作成を「徹底するように」と言う。

「『ズバリ、どんな言葉が相手の心に響きますか』とよく聞かれますが、多様な社会で、それは1つではありません。このため、同じテーマでも価値観や生活状況に合わせてメッセージを送り分けます」と福吉さんは言う。(図「各セグメントの特徴」参照)

検診受診対象者をセグメントし、その声を拾うと、層別の意識の違いが見える。データ提供:キャンサースキャン

 例えば、マーケティングのフレームワークを用いた、子宮頸がん検診の受診を呼びかけるツールの作成プロセスはこうなる。

(1)既存データの分析…論文や調査から子宮頸がんに対する女性の意識について、明らかになっていること、明らかになっていないことを把握し情報を分析する。

(2)ターゲットの抽出…今回のプロジェクトの対象者を限定する。マーケティングのフレームワーク「STP」の「T(ターゲット、標的市場の選定)」として、今回は子宮頸がんの罹患率が急に高まり始める25歳女性をターゲットにした。

(3)ターゲットをセグメント(市場の細分化)する…ターゲットを「行動変容のステージモデル」をもとに【無関心層】【関心層】【準備層】に分ける。

(4)インタビュー調査…セグメントごとのターゲットをインタビューし、子宮頸がんに対するイメージや意識をじっくり聞く。

(5)メッセージを作る…インタビューによって、ターゲットの意識や関心事、価値観を分析し、「自分ごと」にできるようなメッセージを作る。ふわっとした思いつきのメッセージでは相手の心には響かない。

(6)ツールを作る…ターゲットが思わず手に取るようなデザインや写真を使う。

 これまでの子宮頸がん検診受診を勧めるツールには「がんになる前に検診を受けよう」と書かれていることが多かった。だが、25歳の女性には、「そうは言われても、がんは高齢者の病気」「がんになると死ぬと言われても、私はそうならない」というイメージを持っていた。