【その2】脳にとっての「奇跡の肥料」バイオフラボノイド

 柑橘系の果物や多くの野菜に見られるこの植物成分は、新しいニューロンの生存に不可欠だ。ポリフェノールと呼ばれる植物由来の化学物質もそれで、コーヒー、チョコレート、ブルーベリー、ぶどう、その他の青、赤、オレンジ色の食品に見られる。

 それどころか僕らが通常捨ててしまうコーヒーの実は、ニューロンの成長のために最もよく研究されているポリフェノールを含んでいる。ポリフェノールはニューロンにとっての奇跡の肥料だ(*3)。

NG要素「脳細胞を損なうストレスとうつ」

 慢性のストレスが海馬での神経発生をひどく阻害していることが証明されている(*4)。ストレスもうつ状態も脳の同じ部分に神経性萎縮とニューロンの損失を起こすことが明らかになっている(*5)。

 興味深いことに、抗うつ剤は反対の作用をもち、慢性うつの患者の神経発生率を高める(*6)。一部の科学者の考えでは、抗うつ剤の効果はそれが神経発生に与える影響にも起因しているという。

 うつ症状の人は新しい脳細胞ができればできるほど気分が良くなるだろうし、脳がエネルギーを効率よく作れば作るほど、気分が良くなるだろう。そしてうつが少なくなるにつれ、神経発生の比率も同様に改善する。僕はべつに、もっと抗うつ剤をと推奨しているんじゃない──もっと神経発生を起こすようすすめているのだ。

 慢性うつでない人にとって、知っておくと助けになるのは、慢性的なストレスを避けるあらゆることが脳細胞の生成に役立つことだ。他方、一時的な急性ストレス──短期間で生じ消えていくストレス──は、あなたの体に、そろそろ元気を回復して新しい脳細胞を形成する頃合いだと教えてくれる。

【その3】健康なストレスをかける「運動」

 脳への血流を高め、体に短期間の健康なストレスをかけることは、神経発生率を向上させる。運動はまた、新しいニューロンを死から守る神経成長因子の放出を促す(*7)。心配はご無用──スポーツジムに奉仕する必要はない。

 本書手早く簡単なエクササイズは、新しいニューロンを成長させて、生かしつづける絶好の方法だ。フィットネスクラブ通いをする必要はないが、できるならばやってもよい。それによってあなたはミトコンドリアとニューロンを増やし、パフォーマンスを上げられる。

【その4】ニューロン生成を高める「楽しい環境」

 科学者マイケル・カプランは刺激の多い環境が動物のニューロン生成を高めることを発見した(*8)。実験動物を面白い遊具でいっぱいのケージに入れ、神経発生のレベルを観察したのだ。僕はこの実験を真摯に受け止め、本書の大半を書くことになるバイオハッキング研究施設をたくさんの刺激に満ちた夢のような環境にした。そこは、多くの時間を過ごす僕たちが夢中で楽しめるような面白い小道具でいっぱいだ。

 もし僕が新しいニューロン生成の問題を解決せねばならなくなったとして、何の変哲もないベージュ色の壁をにらんで研究しつづけることで脳細胞をむざむざ死なせてしまったら、悔やんでも悔やみきれない!

【その5】脳細胞に感謝される「セックス」

 2010年、ラットの海馬に性体験が与える影響を観察する実験が行なわれた(*9)。成獣のオスのラットを、性的に受容可能なメスに1回だけ、または14日連続で1日1回めあわせた。セックスが神経発生率にどう影響するかの観察に加えて、セックスの期待に直面したラットのストレスレベルも調べた。

 結果は、僕ら人類にとっても非常に興味深く示唆的だった。1回だけセックスしたラットは、ストレスホルモンのコルチゾール値が上昇し、海馬の新しいニューロンも増えた。その一方で、14日連続でセックスしたラットは、コルチゾールの増大は初日だけだったにもかかわらず、神経発生率の改善はつづけて見られたのだった。

 この発見を僕らの寝室ではどのように解釈するか? まあ、ストレスがたまっていると思っても、とりあえずそのムードになるように頑張ってみるのが得策じゃないだろうか。この研究は、セックスはコルチゾールの短時間噴出という悪影響を抑えながら、神経発生率を高められるということの強力なエビデンスになっている。あなたの脳細胞(とパートナー)は感謝してくれるだろう。

(本原稿は『HEAD STRONG シリコンバレー式頭がよくなる全技術』よりの抜粋です)