ここ数年、小惑星の資源利用について関心が高まっています。

 日本で小惑星というと「はやぶさ」の活躍で広く知られるようになりましたが、小惑星の資源利用と言われてもピンと来ないのが実情だと思います。

 小惑星の多くは、火星と木星の間の小惑星帯、アステロイドベルトを公転しています。月よりもずっと小さく、大半は丸みのある不定形のいびつな形で、球形ではない場合が少なくありません。

 小惑星と呼ばれるものは現在、約60万個が登録されていますが、直径1キロ以下の小さいものや未発見のものも含め、数十万個あると推定されています。

 新しい小惑星を発見すると発見者に命名権が与えられるのは、よく知られるところです。日本で話題になった「イトカワ」のように、人の名前の天体が多く存在しています。

 資源利用の議論が過熱してきているのは、金、銀、プラチナ、スズ、リン、亜鉛、アンチモンといった大量のレアメタルが含有されていることがわかったからです。どうしてわかったのかというと、衛星によるリモートセンシングです。

 センサーを使って、小惑星に価値の高いレアメタル系の鉱物がどれだけあるかを確認することができるリサーチを、今の科学技術の力が可能にしつつあります。

 小惑星の資源利用の前にはまだまだ多くのステップが必要になりますが、まずは、その価値がどれだけあるかを確認することは必要です。実際、2015年7月に地球から約240万キロを通過した直径1キロ弱の小惑星「2011 UW158」に5兆円以上の価値があると発表されて、アメリカで大きな話題になりました。

 この5兆円以上の価値を決めたのが、グーグルのエンジニアが創設したアステランクでした。この社名は「アステロイド(小惑星)のランキング」の意味です。

 小惑星の価値をランクづけしている会社で、アステランクには5兆円以上の、それこそ天文学的価値がある小惑星が数百もリストアップされていると言われていますが、まだ2割くらいの小惑星しかリスト化できていないそうです。

 なお、このアステランクは、2013年に宇宙資源ベンチャーのプラネタリー・リソーシズに買収されました。

(この原稿は書籍『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)