投資家たちの宇宙ビジネスへの期待度は、その投資先に如実に表れている。マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツやポール・アレン、グーグルの創業者ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、そしてソフトバンクの孫正義氏など、ビリオネアはどんなビジョンを持って宇宙ベンチャーに投資しているのか。清水建設宇宙開発室、JAXA出身の宇宙ビジネスコンサルタント・大貫美鈴氏の新刊『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から、内容の一部を特別公開する。
宇宙ベンチャーに投資する世界のビリオネアたち
投資家たちが、宇宙ビジネスにどれくらい期待しているか。それが象徴的に出てきている事実があります。世界のビリオネアたちが、次々に宇宙ベンチャーに投資を始めているのです。
世界の大富豪であり、資産額ランキングで毎年トップを飾ってきたビル・ゲイツは、小型・平面で衛星情報を補足できる独自技術を持ったアンテナ会社に投資しています。
同じくマイクロソフトの創業メンバーであるポール・アレンも、モハベ・スペース・ベンチャーズや、ストラトロンチ・システムズ、資産運用や投資を業務とする投資会社バルカン・エアロスペースを通じて、宇宙開発に参入しています。
グーグルの創業者、ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリン、前会長のエリック・シュミットも、多くのお金を宇宙ビジネスに投資しています。
特に資金を投じているのが、プラネタリー・リソーシズです。その狙いについては前回説明したとおり、おもに小惑星の資源利用などで、その活動について「宇宙の未来だ」と評しています。また、グーグルがバックについていることが市場には大きなインパクトになりました。
なぜなら、「その企業が本当に成長できるのかわからない」というリスクがあるからです。それでも「自助努力で前に進んでもらわなければ困る」という考えは同じであり、通常、いきなり多額の資金は投入しません。グーグルもバックについたからといって、最初から多額の資金を投入したわけではありませんでした。
ベンチャー企業側の自助努力には、クラウドファンディングがあります。宇宙関連の事業はクラウドファンディングではなかなか難しいとも言われるのですが、プラネタリー・リソーシズでは、「1億円集まったら衛星をひとつ打ち上げる」というプロジェクトを稼動させ、1億5000万円を集めました。
宇宙クラウドファンディングの成功企業の1番目となり、実際に宇宙望遠鏡が打ち上がることになりました。この実証衛星の打ち上げにより、技術的実証とともにマネジメントできる評価が市場の中でつき、さらに投資が増えていくことになります。
他にも、スカイプやホットメールへの投資家としてアメリカではよく知られているシリコンバレーの投資家、ドレイパー・フィッシャー・ジャーベットソンは、宇宙ビジネスへの投資が活況になるずっと以前から、投資活動をしていました。誰よりも早くスペースXとプラネットに投資、宇宙投資家としても名を上げていくことになります。