「最初の瞬間」をつきつめて考える
五十嵐:スプリントでは、顧客が製品やサービスを利用するまでを簡単な「マップ」にするというプロセスも最初にします。このマップでは、どの部分が最も重要なのでしょうか。
ジェイク:オープニング・シーン、つまり最初の場面が非常に重要です。オープニング・シーンとは、ニュース記事やSNSなど、いちばん最初に顧客が製品やサービスを目にする場面のことです。
実際に顧客がその製品やサービスに出会う前の段階を丁寧に考えることが大切です。たとえばいちばん最初の場面には2つ、3つの試作品を並べてみるとか、あるいは逆に競合他社のものを並べて比較してみるのも有効だと思います。
倉光:スプリントの最終日に、「スプリントクエスチョン」をふりかえるときに、チームのメンバーの中で判定が分かれることがあります。「これはうまくいった」という楽観的な捉え方と、「新たに議論すべき事項が見つかった以上、成功と判断することはできない」という悲観的な捉え方になるなど、大きく意見が割れることもあるのですが、そうした場合、どう考えればよいのでしょうか。
クックパッド株式会社デザイナー統括マネージャー
家庭用ゲーム業界でのUIデザイナーを経て、2015年よりクックパッドに入社。アプリ「クックパッド」「みんなのお弁当」のUI/UXデザイン、「cookpadTV」CIデザイン、デザインスプリントの計画/実施/ファシリテーション、子会社におけるサービスデザイン組織の立ち上げなどに関わる。
ジェイク:そんなときは「決定者」が判定します。スプリントをするにあたっては、かならず最初に誰かを「決定者」と決める必要があります。
誰もが平等な権利を持つというのはフェアに見えるかもしれませんが、すべてを民主主義的に解決しようとしていると、いつまでたっても物事が決まらず、暗礁に乗り上げてしまうことがあります。
もうひとつの決め方としては、スプリントをやった翌週の月曜にもう一度チームで集まることです。みな、週末を挟んで冷静に考え直す時間を持ち、そのうえで月曜日にふたたび集まり、話し合いをする。その議論を受けて最終的に「決定者」が決断するというのもいいと思います。
「時間コスト」を合理的に検討する
五十嵐:5日間という設定のスプリントですが、たとえばグーグルでは「3デイズ・スプリント」といったカスタマイズや、ローカライゼーションが見られます。僕たちも少しずつカスタマイズし始めたところもあるのですが、変えていいことといけないことは何ですか。
ジェイク:スプリントを実際のチェックリストに従って忠実に実践してきた人たちが、そのうえでカスタマイズするのはとくに問題はありません。
ただ私が心配なのは、きちんとチェックリストに従った経験が一度もないまま、いきなりカスタマイズしてしまうことです。最初に使うときは、まずは基本形を実践してほしいのです。