現代の日本人男性にも参考になる
中国皇帝のための健康法

 養生訓のベースとなった中医学の、さらに基礎となった書物のひとつが、紀元前200年以上前に書かれた『黄帝内経』と呼ばれる医学書だという。

「“黄帝”とは、紀元前2400年以上前に中国を統治したとされる伝説上の人物。黄帝が実在していたかどうかは定かではありませんが、同書では黄帝と名医の問答形式で古代中国の医術などが記されています。つまり、国を統治する男性のヘルスケアを前提に書かれた書なのです。年を取っても壮健でいたいという権力者のための書ですから、男性の健康法については非常に細かく書かれています。大昔に書かれた書物なので、初期の段階では『健康のために水銀を飲んだ方がいい』などといった、トンデモ療法もありました。秦の始皇帝も健康のために処女の経血や、水銀を飲んでいたといわれていますよね。結局短命だったわけですけど」

 そうした信ぴょう性がない健康法は、時代を経て削除されていき、エビデンスがある方法だけが残されていったのだという。

「日本人向けに書かれた『養生訓』は、黄帝内経の理論も参考にしているので、養生に気を使う男性が読むにはうってつけの書ともいえます」

『養生訓』は食事、睡眠、運動、性生活、メンタル面まで、広範囲でアドバイスがされている。そのアドバイスの根底となる理論の1つが、中医学における『精』という概念だ。

「黄帝内経の解釈では、『精』は生命活動の源です。100%合致するわけではありませんが、西洋医学だと“ホルモン”にあたるもの。10代、20代の若い男性が、渋谷のような騒がしい場所に行って女の子をナンパしようなんて考えるのは、それこそ“精”が満ち満ちているからでしょうね」

 精は知力、精力、活力などあらゆる生命活動と関わりがあり、男性の場合だと精が多いほど闘争心も強くなるそうだ。「英雄色を好む」といった慣用句も、活力と精力の源が同じ「精」だと考えると腑に落ちる。

 精の量は人それぞれ異なるが、年とともに減少していくという点においては、誰しもが通る道だという。

「精が減ると、先ほどお話したように、男性でも更年期の症状が表れ始めます。ただし、精の減り方にも個人差があって、40歳を過ぎてもまだまだ現役の人もいれば、早いうちから活力を失う人もいます。ですが、普段の生活で養生していれば、精の減少をある程度抑えられます。『養生訓』はその養生のためのハウツーでもあるのです」