消費増税法案の閣議決定を巡って、国民新党が分裂した。亀井静香代表が閣議決定に反対して連立離脱を表明したが、自見庄三郎金融相は閣議決定に署名し、6名が連立政権にとどまった。結局、亀井代表ら2名が離党した。わずか8名、政党支持率0%の政党が政局を振り回し続けるのは異常な事態だ。「少数意見の尊重」という主張は一見「正論」だが、全体感なく1つの政策の実現に固執し、少数の支持者の利益だけを守ろうとする姿勢が、政治を混乱させてきたのは明らかだ。

 今、日本政治に必要なのは、財源を考慮しながら政策課題に優先順位をつけ、包括的なパッケージとして提示できる政党だ。民主党政権の混乱で、「小選挙区制・二大政党制」が批判されがちだ。だが、利益誘導政治を促進し、中小政党の横暴な振る舞いを許す「比例代表制」「中選挙区制」「多党制」の政治より、日本政治の現状にはるかに適している。日本が目指すべきは、二大政党制による政権交代のある民主主義の更なる成熟だ。

消費増税の実現は
財務省支配の完成なのか?

 消費増税法案を閣議決定した野田佳彦内閣だが、この先も茨の道が待っている。党内の増税反対派は収まらず、小沢一郎元代表を支持するグループ(小沢グループ)の牧義夫厚労副大臣、森裕子文科副大臣ら29人が党・内閣の役職辞任届を提出する事態となった。だが、小沢グループも単純に倒閣に突き進めない難しい状況にある。

 小沢元代表が、年齢的に一から新党を立ち上げて政権を目指すのは困難だ。また、小沢グループは当選1~2回で選挙基盤が弱い若手が多い。次期総選挙で多くの議員が落選すれば、小沢元代表は党内の権力基盤を喪失する。離党も総選挙も避けて、裁判での無罪確定後、9月の民主党代表選で党代表・首相の座に就くのが、小沢元代表の唯一の戦略だ。

 一方、野田首相は解散総選挙への突入を恐れていない。「日本新党」で政治家のキャリアをスタートさせた野田首相は、「一内閣、一仕事」を政治信条とした細川護煕元首相の影響を強く受けている。そして、自らの「一仕事」を消費増税と決めて全くブレるところがない。増税が実現するならば、政権の座に固執する気もないようだ。だから、自民党・公明党への政権交代のリスクが高い解散総選挙にも躊躇いが見えない。小沢元代表にとって、野田首相の姿勢は脅威だ。野田首相を倒閣まで追い込み続けることは難しいだろう。