犯罪のデパートに
国や企業は手だてなし
「ダークウェブでは、独裁政権下でレジスタンス中の政治家やジャーナリストといった人たちに加え、テロリスト、ハッカー、犯罪者なども活動しています。このサイバー空間は、非常に匿名性と秘匿性が高く、取引も現金ではなく、足が着きにくい仮想通貨で行われることが多いので、世界中の警察や政府も手を焼いている状況です」(高野氏、以下同)
アクセスする方法は簡単だ。これは一例だが、「Tor Browser」という特殊なブラウザをインストールし、その先のネット空間にアクセスすると、そこにしか表示されないサイトが膨大に存在する。
サイト群の中には、一見、「Amazon」や「2ちゃんねる」と似通ったサービスもあるが、そこで取引されているのは、麻薬、銃、児童ポルノ、個人情報、サイバー攻撃代行など法的に“アウト”なものばかりだ。
全体的に見ると日本語対応されたサービスはまだ少ないようだが、こうした世界的な流れの一方で15年、日本でもサイバーセキュリティ基本法が施行され、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が発足した。
しかし、その体制は必ずしも十分とはいえないようだ。その理由の1つとして、高野氏はこう指摘する。
「頻発するサイバー攻撃が、国家的な意思によるものなのか、個人の私欲なのか、判断しづらいこともあり、政府も全方位的にはなかなか対応できていない状況です。ここ近年は着々とサイバーセキュリティー人材も育ってきていますが、それでもまだ足りておらず、政府はどの分野に重点を置くか、難しい判断を迫られているのだと思います」
NISCは、サイバー犯罪から国家や企業を守る技術者を育成すべく、新たに国家資格を設け、20年までに3万人の有資格者を確保するとしているが、果たして実現できるかは不透明だ。
一方、企業ではセキュリティー会社を使って情報漏洩対策に取り組む大手も増えているが、中小レベルではまだその意識は薄いといえる。