弱者ほど困窮する仕組みだが
抜本的改革には反発も多そう

 こうした個人での運用に加え、高齢者であっても体が丈夫なうちは働くという意識を持つことも大切だ。しかし、現実問題として加齢と体力の衰えは往々にして比例する。現役時代と同じパフォーマンスで稼げるかといえば、そうではない人の割合が多いことは容易に想像がつく。

 しかも、現在の年金制度では、現役時代に低所得だった人の方が、よりマイナス幅が大きいのだという。

「公的年金の仕組みは2階建てといわれますが、2階部分(厚生年金)の給付額は現役時代の給与に比例します。よって給与が低いと基礎年金(国民年金)の割合が大きくなります。今後は、厚生年金と基礎年金ともに給付水準が低下していく見込みですが、厚生年金が1割程度で下げ止まるのに対して、基礎年金の低下は3割程度になると予測されています。これにより、特に低所得層の会社員や非正規労働者でマイナス幅が大きくなるのです」

 つまり構造上、弱者にしわ寄せがいくことは避けられず、明らかに社会福祉の観点からバランスを欠くことになる。これについては手だてが必要だという。

「根本的な方策としては、厚生年金と基礎年金の下落度合いを揃えることが必要です。現在の見通しと比べて、2階部分の引き下げが大きくなりますが、逆に基礎年金は手厚くできます。2階部分の割合が大きい高所得層からの反発も考えられますが、公的年金の『自助努力が難しい人のための制度』という側面を考えれば、このような見直しも検討に値すると思います」

 社会保障の柱を支えてきた公的年金だが、世界でも類を見ないスピードで超高齢化社会を迎える日本では、今のままでは機能しなくなるのは明らかだ。しかし、中嶋氏が提案するような、抜本的な年金改革が実現するかどうかは未知数。個人レベルでの意識改革として、年金に対する期待値を下げ、これまで以上の自助努力・自己防衛で高齢期に備える必要がありそうだ。