世界最大の化学コングロマリット、ドイツのBASFの連結売上高は、8兆2386億円(2017年度)。日本市場への最初の接触は1888年(明治21年)と古く、今では国内に24の生産拠点のほか、4つの研究開発拠点を持つ。日本における売上規模は2137億円と小さいが、今年2月に“初の生え抜きトップ”となった石田博基社長は、日本法人の戦略転換に踏み出す。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 池冨 仁、インタビューは2018年5月21日に実施)
「主体性と変換力を持とう」
キーワードを打ち出した背景
――外資系企業と言えば、一般的に「戦略は全て本国で決定されるため、日本法人では何も決められない」「日本法人はあくまで支店にすぎず、営業を管理するだけ」などのイメージがあります。石田社長は、この2月にBASFの日本法人では初となる新卒入社のトップになってから、社内では「主体性と変換力を持とう」と訴えているそうですね。あらためて、これらのキーワードを打ち出した背景には、どのような問題意識があるのですか。
なぜ今、BASFの日本法人にとって、主体性と変換力が必要なのか。はっきり言えば、危機感からです。
世界をリードするドイツの化学メーカーのBASFは、1865年(慶応元年)の創業で、153年たった今日でも「ワンカンパニー」(1つの企業体)として運営されています。創業の当初より、石油化学コンビナートにおける川上から川下まで、原料から最終製品に近いものまで一気通貫する効率的で無駄のない生産体制を構築してきました。現在は、世界80ヵ国以上で事業を展開している。