「心ときめく体験」を求める4%を狙え

 そして、マツダ自身、このブランドエッセンスを実現することをミッションとして、燃費性能や排ガス性能を重視した内燃機関の開発にこだわり、サスペンション・シャシー性能などによって実現するハンドリング性能、内外装のデザインやクオリティを突き詰めていく。すべては「走る=運転する歓び」を体験してもらうためだ。

 その想いがこのメッセージに込められ、開発から調達、製造、販売、マーケティングといったすべての社内関係者の意識を統一し、現実に形として実現していったのである。

 マツダは2017年上期、過去最高の世界販売台数を記録した。その販売台数は78万台、2017年3月期通期での見通しは160万台。これはマツダにとっては生産キャパシティの最大値でもある。同じ期間でグループでの世界販売台数として1000万台を見込むトヨタの実に6分の1の規模でしかない。

 しかし、逆にこの規模だからこそ、EVや自動運転車という潮流とは異なるマツダならではの「存在価値」を訴求することができる。

 経営再建に向けてブランドエッセンスを定めた際、マツダは自社が獲得すべき市場規模を自動車市場の4%と定めた。世界最大の自動車メーカーを目指すトヨタと異なり、マツダはわずか4%の市場シェアを取ることさえできれば(注1)、大成功なのである。

 マツダはこの4%を導き出すために、全世界における消費者の自動車に求める価値意識について調査を行っている。既に20年近く昔の2000年前後のことだ。

 単にクルマと言ってもいろいろな価値ニーズがあるので、どのような価値観が世の中には存在し、それがどのように分布し、どのような価値観を持つ人がどの自動車メーカーを支持しているのか、を調べたのである。

※注1:なお、現在のマツダの自動車市場におけるグローバルシェアは2%である。