今人工知能(AI)研究の最前線において、大きな変化が起きています。その象徴が英DeepMind(ディープマインド)が開発したAI囲碁ソフトウエア「AlphaGo Zero(アルファゴ・ゼロ)」でしょう。昨年10月にこの開発に関する論文が発表されたとき、僕はおそらく他の人以上に衝撃を受けました。
AlphaGo Zeroは、前身であるAlphaGoのように、人間の過去の対局データから学習するのではなく、囲碁の基本ルールだけを教えて、あとはAI同士が「教師なし」の学習で対局を繰り返し、上達していく手法が採用されました。
過去の対局データを与えなかったにもかかわらず、人間のチャンピオンを破ったAlphaGoと対戦させた結果、100勝0敗でAlphaGo Zeroが圧勝するという、衝撃的な結果だったのです。
研究開発者である、デイビット・シルバー・UCL(ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン)教授は、ビデオの中で次のように語っています。
「人々は、優れたAIを作るにはビッグデータや巨大なコンピューティングパワーが必須だと考えるが、AlphaGo Zeroは過去のAlphaGoよりも少ないデータとコンピューティングパワーで開発された」。そして、「私たちは囲碁における『tabula rasa(タブラ・ラーサ)』を発見した」と締めくくっています。