「わたしたちのチームに、セキュリティへの多大な投資をするよう指示しました。これはわたしたちの今後の収益性に大きな影響を与えることになるでしょう。しかしわたしは、われわれの利益を最大化するよりも、コミュニティを守ることが重要であり、それがわたしたちの優先事項であることを明確にします」

 今後、利益よりプライバシーを重視すると、ザッカーバーグは述べた。これが、現在の顧客追跡型の広告収益モデルからの離陸宣言であるかは不明である。というのも、フェイスブックのCOOシェリル・サンドバーグは、フェイスブックのビジネスモデルに関して重要な発言を行っている。彼女は、ユーザーにオプトアウト(個人データの第三者への提供を本人の求めに応じて停止する)の選択肢を提供できる唯一の方法は、フェイスブックの有料サブスクリプション・モデルだけだと述べた。

 フェイスブックは20世紀のTV産業と同じように、ユーザーに向けた「広告」で収益をあげている。

プライバシーの死か、広告の死か

 いま、コンテンツやサービスの「タダ乗り」の文化は大きく修正されている。すでに欧米のジャーナリズムや音楽配信も、有料化やサブスクリプションに移行している。フェイスブックが個人データとプライバシー保護に徹したサービスを開始するなら、対価を払い、この便利なサービスを継続してもらいたいと願うユーザーは多いはずである。

 しかし、フェイスブック有料化で一番困るのはアドテック企業であり、広告主である。「プライバシーの死」がターゲット広告という奇跡を生み出した。いま、プライバシー保護は「広告の死」と対峙している。逆にいえば、フェイスブックから「広告」を排除したら、世界の広告業界に甚大な影響が生じる。グーグルとフェイスブックは、現代のデジタル広告やマーケティングにとって不可欠なプラットフォームなのだ。

(続く。次回は、2018年7月3日公開予定)