「仕組み化」が乗り越えた、2つの壁

この取り組みの中で、いくつか重要なポイントがあります。

ひとつは、部門の壁を越えた取り組みをしたことです。
「お客さま企画会議」では、商品開発のほか、品質管理、マーケティング、外部の木型職人、売り場スタッフなどが集まって、全員で消費者に向き合いました。
大企業になればなるほど、部門間の壁ができがちで、調査結果や発見された貴重なインサイトが商品開発などに活用されないケースが多く見られるというお話をしましたが、マルイでは部門横断的に取り組むことで商品開発に成功しています。
また、マルイの場合、商品を企画した部門が、企画だけで終わるのではなく、最終的な商品化まで面倒を見ることで、この問題を乗り越えています。多くの企業では、インサイトを発見した部門・企画部門から、開発部門や事業部門に引き継がれたとき、部門間にボールが落ちてしまいがちです。それに対し、企画部門が最後まで面倒を見て結果まで出す(結果責任を持つ)ということであれば、部門間の引き継ぎ問題は解消されるでしょう。マルイのケースは、守備範囲や役割を超えて動く、「サッカー型」の動き方が成功をもたらす好例ではないでしょうか。

もうひとつは、「仕組み化」は大事ですが、「手法化」して本質を見失わないようにしたことです。
消費者との共創を「仕組み化」したことで、パンプスから様々なシューズの開発に取り組みを拡大していくことができました。ただし、「仕組み化」された取り組みは、いつの間にか「手法化」してしまうリスクを背負います。マルイでも、「共創」という手法だけに頼って、消費者のニーズを表面的にわかったつもりになってしまい、本当のニーズにたどり着けないケースが出てきたといいます。
消費者との共創は、消費者の真のニーズを見つけ出し、それに応える商品を開発するという「目的」を、いつも肝に銘じておく必要があるという実例ではないでしょうか。